模倣密室

黒星警部と七つの密室の副題。密室大好きな迷警部黒星光が1998年の「黄色館の秘密」以来5年ぶりに帰ってきた。相変わらず白岡警察でくすぶり、密室事件と聞くと狂喜して周囲を困らせる…
北斗星の密室
白岡町の人里はなれた原野の中に建つ熊野義太郎宅。熊野は不動産業やサラ金をやっている金持ちだが、あくどい商法を繰り返したために、恨んでいる者だけで一集落できるといわれるほど。
白岡には珍しく雪の降り積もった夜に、熊野の家から火事だという連絡があり消防車が熊野宅に向かう。途中で黒星警部一行も合流し、一緒に熊野宅へ。
だが火事の様子はない。いたずらだということで消防車が帰ろうとした時に、裏手の物置から出火。消火栓が凍り付いていたので、黒星たちも協力して近くの池からバケツリレーで火を消し止めた。
消化が終わり物置の中を覗いて見ると、そこには熊野義太郎のバラバラ死体が。物置は中から施錠され、しかも火の出る前に見た時には、雪の上に足跡はなかった。死亡推定時刻は雪が降り止んだ後、したがって黒星の大好きな密室事件であった。

つなわたりの密室
築後40年は経っている老朽化した4階建てのマンション。立替のための立ち退きが進み、現在住んでいるのは3階303号室のヤクザ者のみ。
マンションの裏手は宅地の造成が進んでいるが、マンションがあるために日当たりが悪くて成約率が悪い。造成もあまり進んでおらず、マンションに面した側もまだ青いシートが掛ったままで、一戸建てが建造中であった。
303号室で住人の死体が発見されたのは、そんなある夜のことであった。住人は後頭部を鈍器様のもので殴られ、部屋の中には誰の者ともわからぬ男の生首が転がっていた。
猟奇殺人事件の様相を呈していたが、黒星警部を喜ばせたのは303号室は内側から鍵とチェーンロックが掛り、窓は開いていたものの古いマンションなのでベランダも取っ掛かりもなく、下の地面はぬかるんでいたが足跡がなかったことであった。つまり303号室は黒星警部の大好きな密室であったのだった。

本陣殺人計画
江戸時代に白岡の本陣であった笹原家は相次いで当主が死亡し、弱冠25歳の光太郎が唯一人残り、広大な地所を相続するはずだった。
そこに20年以上前に家を飛び出し、行方知れずであった光太郎の父の弟、つまり光太郎の叔父の栄作がひょっこり帰ってきて笹原家の財産の半分を相続し、さらに光太郎の恋人だった美登里も奪ってしまった。
栄作と美登里は結婚することになり、光太郎は新婚初夜に栄作を亡き者にし、美登里を栄作殺しに犯人に仕立て上げようとする。
光太郎は横溝正史の本陣殺人事件に心酔しており、新婚初夜を笹原家の離れで迎えるように叔父に勧める。笹原家の離れは本陣殺人事件の舞台にそっくりであったのだ。
叔父達は離れで初夜を迎えることを承諾し、光太郎は嬉々として離れにある仕掛けを施した…

交換密室
岩城純一は自分の経営するアンティークショップの経営が上手くいかず、妻の保険金を目当てに妻殺しを企んでいた。ある晩スナックで隣り合った桜田という男といつのまにか意気投合し、酔った勢いで交換殺人の約束をしたらしい。
岩城は覚えていなかったが、桜田から電話が掛り岩城が横浜で接待をする夜に岩城の家に忍び込んで、岩城の妻を殺すという。
横浜で飲んでいた岩城のところに、妻から何者かが家に忍び込もうとしていると携帯電話が入る。岩城は護身用に包丁を持ち、鍵の掛かる岩城の部屋に立てこもるように指示をして、タクシーで自宅に向かった。
岩城が自宅に着くと、すでに警察が来ており妻は岩城の部屋で包丁を胸に突き立てられて死んでいた。妻の寝室の窓が破られ、賊が侵入した形跡あったが、岩城の妻が死んでいた部屋は窓もドアも内側から鍵が掛った密室だった。桜田は密室殺人を犯したのだろうか…

トロイの密室
奥秩父の山中にある古い洋館。土建業者の土呂井竜蔵は、昔の雇い主の柴崎から借金の方にこの屋敷を奪い取った。柴崎はそれを恨んで、「必ずおまえを殺す」という脅迫状を土呂井に送りつけてきた。
脅迫状の指定の日、土呂井は地元の町長と町長の腰ぎんちゃくで土呂井の商売敵玉川光男らを招いてパーティを行った。すると柴崎から棺桶が宅配便で送りつけられる。
やがて雪が降り始め、町長も玉川も洋館に泊まることになった。深夜、洋館の呪われた部屋と呼ばれる、もともとダンスホールとして使われていた部屋に泊まった玉川が、死んでいるのが見つかった。
玉川の部屋は内側から鍵が掛った密室で、柴崎が送りつけてきた棺桶が何故か入れられており、その棺桶を開けてみると柴崎の死体があった。さらに土呂井竜蔵も密室状態の自室で死んでいた。3人の死者を前に呆然とする一同…

邪な館、1/3の密室
白岡町在住の大富豪横島松枝は、白岡の町外れに雑木林をまるごと買取り、そこに洋館風の豪邸を構えて住んでいた。その松枝が重病に罹り、明日をも知れぬ命となって、近親者の姪玉川由香と甥の山脇浩、浩の弟の俊三の3人を呼んだ。
松枝には他に近親者はなく、このうちの一人と養子縁組して莫大な財産を残そうと言うのだった。3人が呼ばれたのは、誰が養子に相応しいか松枝にテストされる意味合いがあった。
3人は洋館の東翼の1階から3階に、それぞれ一部屋を与えられて泊まった。1階は由香、2階は俊三、3階は浩であった。夜中に、東翼から大音響が響き、皆が駆けつけると1階の部屋には由香と浩が伸びており、2階からは俊三が消えていた。
1階から3階までドアには内側から鍵がかかっていた。窓は全て開いていたが、地面には足跡がなくまた建物の外壁を伝って登ることも不可能に思えた。
暫くして庭の木の枝から俊三が落ちてきた。俊三も気を失うほどの大怪我をしていた。いったい密室の中では何があったのだろろうか…

模倣密室
白岡町と春日部市の境付近で、飼われていた猿が脱走して人々を襲う事件が起きていた。そのさなかに春日部市で密室事件が発生した。
民家の一室で重傷を負った男女が発見されたのである。部屋も窓も中から鍵がかかった密室で、唯一暖炉の煙突が外との通路だが人間が通り抜けたとは思えない。
春日部警察には黒星警部のような密室大好き人間はいなかったので、警察は民家の住人の男が、女を連れ込んで凶行に及んだと推理し、男を連行した。
事実、その男は女にストーカーまがいの行為を繰り返していたと言う。ところが男は頑強に犯行を否認し、隣の白岡警察の黒星警部も事件は密室事件で犯人は他にいると動き出した…


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