奥能登殺人旅行

定年間近の商社マン野々村省三は結婚25周年を迎えて、フルムーン旅行を思い立った。ハネムーンで行った能登半島を同じ行程で巡ることにしたのだ。
当時と状況は変っているが東京を寝台列車で発ち、金沢で急行に乗り換え、輪島で当時泊まった旅館に泊まる。翌日は能登半島先端の狼煙に行き、和倉温泉泊。最終日は新婚時代に住んだ金沢を観光する行程だった。
省三には25年前のハネムーンの際に、絶対に知られてはいけない失敗があった。新婚初夜の時に緊張感をほぐすために飲めぬ酒を飲み、あろうことか部屋を間違えてことに及んでしまったのだ。
しかし妻の文恵は、そのことを薄々知っているような気配がないではない。旅行中も気取られぬようにしたが、途中でひょんなことから妻と喧嘩をし、それが原因で和倉の旅館をキャンセルして恋路に泊まることになった。

野々村省三の死体が恋路の海岸で発見されたとの報せが、娘の万里子のところにもたらされたのは夜遅くであった。事件は殺人と断定され、能登を一緒に旅した文恵は行方不明。
死体が発見される前夜のこと、恋路の海岸で野々村らしい男が女と言い争っているのが目撃されていた。警察は文恵が夫省三を殺して行方をくらましたと考えているようであった。
万里子は母文恵に限って絶対にそんなことが出来る人間ではないと、父省三と母文恵が旅した後をなぞることに決め能登に向う。
しかし素人の捜査では限界があり、確たる証拠はないまま時だけが過ぎてゆく。そして母文恵が水死体となって狼煙の漁港で漁船の網にかかって見つかった。
警察の見方は母文恵が省三を殺し、耐え切れなくなって自殺したというものであった。
ところがそれから暫くして二つのものが万里子のもとに届く。一つは省三から送られてきた輪島塗の夫婦椀。ずっと以前に届けられたらしいが、省三や文恵の死で不在が続きやっと受け取れたのだった。
その荷物には手紙が同封されていて、今度の旅行を万里子からプレゼントされたお礼の品だと書かれていた。万里子は省三に旅行のプレゼントなどしたことはない。いったいこれはどういう…
さらに一通の手紙が届く。中には使い捨てカメラが入っているだけ。それを現像すると省三と見知らぬ女性が仲良さそうに能登を旅している写真が出来てきた。省三は文恵と旅行していたはずでは…
万里子は事件の裏には第三者の企みが存在すると確信をした。


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