白鳥は虚空に叫ぶ

河田光雄が新潟県青海町の北陸本線を走る特急白鳥に飛び込み自殺をした。もっとも白鳥にはかすらずに、線路脇の地面に激突して死んだが…
河田光雄は証券会社に勤めていて、顧客の金を不正に流用していたらしい。それが明るみに出て失踪し、あげくに自殺したと考えられた。
河田光雄の同僚で、河田から思いを告白されていた石野亜矢子は気の弱い河田に不正ができるはずがなく、河田は何者かに殺されたと信じて現場を見に旅立った。
ところが自殺の様子はたまたま雑誌掲載のために特急白鳥を撮影にきたプロカメラマン磯崎に撮影されていた。磯崎は撮った連続写真の片隅には飛び込む寸前の河田光雄が写っていた。
磯崎によればそれを見て慌てて河田光雄を助けに行ったが、間に合わなかったと言う。このことはたまたま現場を通りかかった、近くの道路工事の責任者によっても確認されていた。河田光雄は不正事件にかかわり自殺したとされるのは当然といえば当
然だった。

だが、これを聞いても亜矢子は釈然としなかった。ここにもう一人河田光雄の自殺に納得しない人間がいた。河田光雄の兄の次郎であった。
そうこうするうちに河田光雄の上司横山修司の死体が東京の荒川の河川敷で発見された。横山は河田光雄とともに不正に関わったとされていたが、横山の父親が会社の実力者であったために処分を免れていた。
河田光雄はこのことを恨み、警察は河田光雄が横山を殺し、新潟に行って自殺した考えた。もともと自殺だけでも納得し得ないのにこれを聞いた次郎も亜矢子もますます不審感を募らせた。
次郎は亜矢子と会って、河田光雄の死の真相を確かめるために新潟に向かうと告げた。それを聞き衝動的に亜矢子も新潟に向かう。
河田光雄が新潟にいたというアリバイが成立すれば、河田光雄に横山が殺せたはずがないという論理であった。

途中で一緒になった亜矢子と次郎は河田光雄の足取りを追ったが、河田光雄はあちこちで足跡を残していた。それがアリバイ作りのようで返って不自然なほどであった。
そうは言ってもアリバイはアリバイであった。光雄と亜矢子は警察に訴えたが、アリバイ同士の間の空白時間が長すぎて一蹴されてしまう。
警察は河田光雄が新潟で横山を殺し、レンタカーで東京に運んで死体を遺棄すればアリバイは成立しないと言ってきたのだった。
落胆する次郎と亜矢子。そこに第三の死体が現れた。河田光雄の手帳に名前が載っていた北沢早苗という女がマンションの自室で腐乱死体となって発見された。
現場には河田光雄の名刺、室内からは河田光雄の指紋が見つかった。財テクに励んでいた早苗を河田光雄が殺したと考えられた。河田光雄は自殺直前に狂ったように人を殺したのだろうか…

「倒錯の死角」「鬼が来たりてjホラを吹く」に続く折原一の第三長篇。構成に凝った第1作、ユーモアに富んだ第2作に続き、時刻表も挿入された第3作の本書は重厚な本格もの。文庫所収時に「白鳥の殺人」と改題された。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -