冥王の花嫁

最初の死体は農道と畑の境目で見つかった。死体は全裸の女で、うつぶせになっていたが、無惨にも頭部が切断されていた。
現場に急行した深町警部と検死官が死体をひっくり返した途端、2人は顔をゆがめ目をつむって死体から飛びのいた。女の頭部が、腹にあったのだ。
女の眉と髪の毛はきれいに剃られ、内臓をくりぬいた腹部にはめ込まれていた。頭部は石膏でくっつけられ、顔の周囲と腹の皮膚は糸で縫いつけてあった。死因は射殺、首は死後切断、まさに猟奇殺人であった。
女の身元は不明であったが、数日を経ずして第二の死体が見つかった。夜のファミレスの駐車場に入ってきた車から、サングラスとマスクで顔を隠した男が降り去って行った。車の助手席には女が残っていた。
その様子を、店の外回りを掃除していた従業員が見ていた。その従業員が車に近づき、助手席のドアを開けた。女の頭部がぐらりと揺れて落ちた、と見えたのは錯覚だった。
女の首からは胴体にバーベキューの串が差し入れられ、その先端に頭の代わりにかぼちゃが刺し込まれていた。ドアを開けた衝撃でかぼちゃが路上に落ち砕け散ったのだった。
助手席の女はコート一枚を着ただけで、やはり腹部には切り取られた頭部がはめ込まれていた。車内に残っていた免許証から、マスコミでも売出し中の若手精神科医樺島ちなみが被害者と判明した。
死因は最初の事件同様射殺で、死後に首が切断されていた。その数日後には第三の事件が起きた。被害者は山瀬千鳥という女流推理作家だった。
第一と第二の事件と違うのは、首のダミーがキャベツであったことと、首を切断されたのが死後ではなかったことだった。
立て続けに起きる猟奇殺人に、深町警部は旧知の団精二に援けを仰ぐ。団は米国に在住していたが、かつて深町が秘書として仕えていた演出家であった。気分屋で同性愛者であり、犯罪分析をライフワークにしていた。
米国のその筋では結構知られており、FBIの関係者とも昵懇であったが、米国でトラブルを起こし、今は日本に帰っていたのだ。この一連の猟奇事件は、まさに団に似合いの事件であった。
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