絵の中の殺人

北海道にある絵里村美術学院に新たに採用された事務員天矢輝彦は、元プロ野球の選手であった。天矢は投手として嘱望されたが、結局泣かず飛ばずで引退し、その後はいくつかの職を転々とし、北海道に移って絵里村美術学院の事務員となったのだった。
天矢が採用されて1ヵ月後、天矢の歓迎会が市内のホテルで開かれた。出席者の日程調整がつかずに、遅くなってしまったのだった。
歓迎会が終わって三々五々出席者達は会場を後にしたが、二次会にも行かずに帰っていった天矢の上司の田谷義昭が殺された。
田谷は美術学院では事務をしていたが、自分でも絵を描き、そのためのアトリエも持っており、そこで絵画教室を開いていた。しかし絵の腕前は大した事はなく、画家としても無名であった。絵画教室も本格的なものではなく、ほんの慰み程度のものだった。
そこで田谷は殺されていたのだ。その背中にはナイフが深々と刺さっていた。さっそく警察の捜査が始まり、天矢たち学院の事務員も訊問された。
そのなかで天矢は1年前にも学院の理事長が殺された事件があったことを知った。1年前の理事長殺しも未解決で、今の理事長の衿村香里は、その理事長の娘であった。
今回死体となった田谷は殺された理事長の側近で、理事長の威光をかさに来て学院の粛清を行い、職員から恨みを買っていた人物であった。
前理事長を殺した犯人が、憎しみから田谷を殺したのだろうか?ところが捜査が進むにつれて以外の事実が出てきた。田谷のしは自然死だったのだ。
田谷が背中をナイフで刺されたのは死後であった。田谷の死因は凍死の可能性が高かった。酒に弱い田谷は歓迎会が終わった後で部屋に戻って再び酒を飲み、そのまま酔って寝てしまい極寒の中で凍死したのかもしれなかった。
事実アトリエの中にはかなり減ったウィスキーのボトルと、灯油がなくなった石油ストーブがあった。そうすると田谷を狙った犯人は凍死した田谷に気づかずにナイフを突きたてたのだろうか…
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