三重殺

郊外のアパートの部屋でバラバラ死体の一部が見つかった。ドアの外に出された段ボール箱の中に被害者の両脚と胴体が詰め込まれていたのを、カラスがつついていたのだ。
この段ボールの箱は宅急便で送る手配がなされていて、カラスがつついているときにちょうど集荷に来て、宅急便の集荷係がカラスが嘴で開けた穴から覗く死体を発見し大騒ぎになったのだった。
宅急便の集荷係によると3日前の朝に事務所に電話があり集荷を依頼された。その日の午後に最初の荷物が渡されたが、そのときに2度目と3度目の集荷も依頼されたのだという。
最初の荷物は大きさから首が入っていたものと考えられた。出てきたのは頬から顎まで髭に覆われ、サングラスをした男だったという。2度目の集荷はその時の依頼で、昨日の朝一番で行われた。
そのときに3度目の荷物は翌日の午後に外に出しておくから持って行ってくれと言われ、多めの金額を渡されたのだという。その3度目の集荷の時に死体が発見されたのだった。部屋の主の名は矢萩利幸といった。
矢萩は髭面で集荷係が見たのと同じ人相であった。犯行現場は矢萩の部屋の中であった。部屋のいたるところに血が飛び散り、死体は冷蔵庫に保管されていたようだった。

荷物の送り先は同じ市内に住む片島青次のアパートだった。すぐに片島のアパートがあたられたが、部屋の中から見つかったのは付け髭とサングラス、それに両腕の入った段ボールだった。
両腕の入った段ボールは矢萩のところから昨日送られたものだった。もうひとつ片島のところに届いたはずの首は、どこからも見つからなかったが、その後の捜査で首は、さらに市内の新発田護という男の住むアパートに送りなおされていたのだった。
片島のところに集荷に来た宅急便の係は、片島もまた髭面でサングラスをかけていたと証言した。そして新発田が留守だった場合は、新発田の部屋の外に置かれたポリバケツに荷物を入れるように指示され、その通りにしたと述べた。
新発田のところに届けられた荷物、おそらく首が入っていたはずの段ボールはその後、行方不明になっていた。また、矢萩の部屋の中にあった多くの指紋と、片島のところにあった両腕の指紋が一致した。
これらの事実から警察は次のように事件の構図を描いた。すなわち被害者は矢萩利幸で加害者は片島青次、片島は矢萩の部屋を訪れて殺害した後で、死体をバラバラにし付け髭を用いて矢萩に変装、宅急便で首、両腕、両脚と胴体の順で自分の住むアパートへ送り、さらにその死体を新発田のところに送りなおした。
片島と新発田の関係はよくわからないが、死体を何らかの方法で始末しようとしたのではないかと考えられた。ところが片島も新発田も行方が一向に判らず、死体の首も出てこなかった。
事件は早くもこう着状態に陥ってしまったが、そんなとき熱海のリゾートマンションで首なしの焼死体が見つかった。その被害者が矢萩利幸だというのである。
さらに栃木県の山中で転落した車からみつかった男が、持っていた免許証から矢萩利幸とわかった。車の男は背中をナイフで刺されており、意識不明の重体だった。車が落ちた時に火災を起こし、顔にはひどい火傷をおっていて顔の確認も不可能だった。矢萩利幸は部屋で殺されてバラバラにされ、熱海で首を切られて焼き殺されたうえ、栃木で背中を刺されたのだった。
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