霧の町の殺人

架空の都市、北海道久寿里市は釧路と並ぶ道東の中心的な町だった。その郊外にある愛媛村の山林で女性の死体が見つかった。営林署に匿名の電話が架かり、死体の存在を告げたのだった。
死体は久寿里市の釧久観光でアルバイトをしていた山口佐紀子のものだった。松の木の枝にぶら下がっていたが、首の索痕などから自殺ではなく首を絞められた後に吊り下げられたものと断定された。つまり殺人である。
道路から現場の松の木まで、男女の絡み合った足跡が残されていた。男の足跡はかなり大きく、身長体重とも相当のものと推定された。その男の足跡は往復し、女のものは片道だけだった。
犯人はかなりの大男で女とともに林に入り、そこで女を絞め殺して松の木に吊るしたあとで現場を立ち去った、そんな状況であった。佐紀子は会社ではごく普通の女で、その日も定時に退社していた。
死亡推定時刻は午後6時から7時の間だから、退社直後に何者かに誘われて愛媛村の現場に行き殺されたことになる。
佐紀子は東京出身で久寿里市では一人暮らし、知人もおらず久寿里市に来た経緯も普段の生活の状態もわからなかった。動機面でも捜査は暗礁に乗り上げた形だった。

久寿里署の署長はほとんどの署員から嫌われ、署長の方もあまり部下を信用していなかった。森村、川崎、喜多見、佐々木の4人の刑事は主流派から外され、独自に捜査方針を決めて動き出した。
佐紀子が勤めていた釧久観光は久寿里市を牛耳る企業である南原グループの一社で、そこの御曹司南原洋が社長であった。南原は経営能力のないお坊ちゃんタイプで、女性関係も派手であった。
森村たちは当然佐紀子との関係を疑った。ほかには実質的に会社を切りまわすやり手の専務葛西武志、佐紀子の上司の経理課長田島真理子も関係者だった。
だがこれら関係者には鉄壁とはいえないまでもアリバイがあった。そんなおり、新たな事件が起きた。今度は葛西武志が密室状態の自宅の2階で殺されたのだ。しかも葛西の首は切り落とされ、どこかに持ち去られていた。
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