しらみつぶしの時計

1998年から2008年にかけての非シリーズ短篇集。
使用中
駅ビルの喫茶店に勤める真美子は、推理作家新谷弘毅を殺す決心をした。新谷はその喫茶店を編集者との打ち合わせに、よく使用した。真美子は新谷がやって来ると、新谷のコーヒーに下剤を仕込む。真美子はその直後に気分が悪いと申し出て店を抜ける。
やがて新谷がトイレに駆け込む。真美子は先回りして男子トイレに入り、二つあるうちの1つの個室に忍ぶ。新谷が隣の個室で用を足して個室を出る瞬間を狙い、忍んだ個室から出て新谷を個室に押し戻し、針金で首を絞める。
そこまでは上手く行った。ことを終えて女子トイレに戻った真美子は胸のネームプレートがないのに気づく。恐らく新谷の死体がある個室に落としてしまったのだろう。男子トイレに戻る真美子。ところが、新谷の死体のある個室は使用中となっていてドアも開かなかった…

ダブル・プレイ
結婚10年目を迎えた木島省平と妻の牧子の仲は、完全に冷え切っていた。それどころか、省平は妻の牧子を亡きもにしたいと殺意まで抱くようになった。まったく忘れていた10回目の結婚記念日の夜も、牧子といさかいになり、省平は家を出た。
省平が向かった先はさびれたバッティングセンターだった。妻と喧嘩した時に、そこでバットを振るとスカッとした。その夜も集中してボールを打っていたが、そんな時男に声をかけられた。
その男は堀田秀雄と名乗ったが、省平の事を良く知っていた。省平が牧子を亡きもにしたがっていることを聞くに及んで省平は驚いた。その堀田が提案してきたのは交換殺人。堀田も金を借りている叔父を殺したがっていたのだった。

素人芸
勤めていた会社がつぶれ、再就職したディスでは店長に怒られて、不満と疲労感を抱えて安アパートの部屋に帰った塚本保雄は、妻に対する不満を爆発させた。浪費癖がある妻は、パートに出て家計を助けることもせず、一日中寝てばかりいるのだが、この日も何かを買ったらしく宅配の空箱が置かれていた。
妻を問い詰めると、買ったのは7万もする腹話術の人形。おまけに2ヶ月も前から腹話術の通信教育も受けていたという。大喧嘩になり、はずみで保雄は妻を殺してしまった。我に返った保雄だったが、そこに隣に住むおせっかいやきの女が呼び鈴を鳴らした。そうも壁越しに様子をうかがっていたらしいのだ…

盗まれた手紙
某国のG将軍夫人が北ホテルに滞在中のアルゼンチンの外交官に一目惚れし、恋文のやり取りを始めた。その方法は夫人が状箱に南京錠Aをかけ外交官に送る。外交官は自分の南京錠Bを状箱にかけ夫人に送り返す。
すると夫人は南京錠Aをはずし再び外交官に送る。外交官が南京錠Bを外すと状箱は開くことができ、ここでやっと外交官は恋文を読む事が出来るというわけである。
ところがこれを知ったG将軍の政敵D長官は手下を使って夫人の恋文を奪い去ってしまった。その恋文でG将軍を失脚させようとしたのだ。
南京錠はどちらも各々の国の最高の職人が作ったもので合鍵は存在せず、鍵なしでは絶対に開けることが出来ないし、状箱に細工した跡もない。では、どうやって恋文は盗まれたのだろうか…

イン・メモリアル
評議会では生きている作家の追悼文を書くコンペがあるという。土方はそのコンペに参加し、T先生の追悼文を書き、その結果最優秀賞に選ばれた。そのことを何より喜んでくれたのがT先生だった。

猫の巡礼
9歳になった飼い猫のみどろに、かかりつけの獣医師からそろそろ猫の巡礼に行ったらどうかと勧められた。聞いたことはあったが、都市伝説の類と思い込んでいた私たち夫婦だが、調べてみると本当に猫の巡礼というのがあるという。
猫が集団で、喧嘩もせず迷子にもならずに、一列になって森の奥の洞窟に詣でるのだという。友人や近所の人に聞いてみても、巡礼には絶対に行くべきだというのだが…

四色問題
都筑道夫の退職刑事シリーズのパシティーシュ。現職刑事の息子の力になってくれる元硬骨刑事の父親が、安楽椅子探偵として事件解決への道筋を示す。
その事件とは、テレビの戦隊ものに出演している若手女優が腹を刺されて殺された。女優は死の直前、腹に刺さったナイフを引き抜き、さらに右腕のブレスレットと時計をはずし、自分の左手首にX字型に傷をつけていた。
被害者は左利きで、どうも犯人は共演している4人の男たちの中にいるらしい。それにしても被害者は、今にも死にかけているのになぜ自分で自分の腕に傷をつけるようなことをしたのだろうか。

幽霊をやとった女
トラブルから私立探偵の免許を取り上げられたクォート・ギャロンは、ホームレスとしてニューヨークの片隅に暮らしていた。ある日、公園で転寝をしていると外套に火をつけられ、危うく焼け死ぬところだった。
気が付いたのが早くて体は無事だったが、外套には大きな穴が開いてしまった。仕方なく外套なしで歩いていると、女に声をかけられた。その女はジャネット・ギルフォイルと名乗り、ギャロンの名も、元私立探偵であることも知っていた。そしてジャネットは夫のクリスを助けてほしいと哀願するのだった。

しらみつぶしの時計
24時間×60分=1440。その閉じられた空間には1440この時計があり、そのすべてが異なる時刻を指し示している。つまりどの瞬間を切り取っても、1日のうちのすべての分に割り当てられているわけだ。
時計はデジタル、アナログを含め様々で、もちろんすべての時計は正確に動いているから、それが同時並行的に流れているわけだ。やらなければならないことは、6時間以内に外部と同期した現在の正確な時を刻んでいる時計を一つ見つけだすことだった。

トゥ・オブ・アス
真宮涼一は、街中で思いもよらず女性に声をかけられた。無口で友人もなく、大学院で研究一筋の涼一に女性が声をかけるはずはないと、涼一自身も思っていたが間違いなかった。女性は木下悠子、高校時代の同級生だった。
この出会いをきっかけに涼一と悠子は交際を始めたが、ある日のこと新聞を開いた涼一は驚愕した。北沢靖子という女性が殺され、ルームメートだった木下悠子が犯人らしいと書かれていたのだ。だが殺された北沢靖子の写真は、涼一が交際している木下悠子のものだった。


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