犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題

著者が一念発起して取り組んだ、星座を巡る謎の物語。続く後編は天秤座から魚座の6編。
宿命の交わる城で
エステサロンに勤める小出成美という女性が、マンションの自室で殺された。頭を殴られたあと、ユニットバスに張られた湯の中に頭を沈められて溺死させられたのだが、そのバスルームには正義を表すマルセイユ版のタロットカードが置かれていた。
一方、大田区の路上で奥寺道彦という元中学教師が、ワイヤを首に巻かれて絞殺されるという事件があった。奥寺はモンスターペアレンツによってうつ病に追い込まれ休職し、心療内科に通っているという。そして死体のシャツのポケットには、ウェイト版の正義を表すタロットカードが入れられていた。
残されたタロットカードから、2つの事件は同じ犯人によるものと考えられるが、被害者同士の接点が全くなく、事件は暗礁に乗り上げていた。

三人の女神の問題
アイドル冬の時代にメジャーデビューした、最後の正統派アイドルユニットのトライスター。所属事務所のオリオン・プロモーションが倒産し、解散した。現在メンバーの3人は、モッチこと望月加奈はローカルタレントに、メグこと若杉恵美はフィットネス経営者に、アズミンこと田中あずみは東京奥多摩で旅館の若女将になっていた。
オリオンプロが倒産したのは、無能な二代目社長折野耕成の放漫経営によるもので、折野はその後詐欺まがいの行為を繰り返し、借金に追われて最近は都内を転々として逃げ回っていた。その潜伏先近くの公園で折野の死体が見つかった。
ナイフを深々と突き立てられた殺人で、犯人もわかっていた。犯人の名は安田玲司というトライスターファンクラブの会長。勤めを辞めて以来、アルバイトをして生計を立てていたが、現在でもトライスターファンクラブの会長であり、ブログも持っていた。
その安田がブログで折野に天誅を加え、自分も死ぬと予告したのだ。事実安田は東京郊外の自宅で、青酸カリを飲んで死んでいた。自殺と考えられた。調べていくと、折野はトライスター再結成の話を持ちかけて詐欺を働いていたらしい。それを知った安田が義憤に駆られて天誅を下したらしいのだが…

オーキュロエの死
綸太郎のもとに雑誌の担当編集者経由で相談が持ちかけられた。佐治くるみという今売出し中の臨床心理士でペットロス症候群の専門家がいるが、その婚約者である須坂厚が殺人の嫌疑をかけられているというのだ。
須坂が殺したとされるのが、大木裕恵こと杉内尚美という女で、五反田のアパートの自室で練炭自殺に偽装されて殺されていた。須坂が疑われたのは主に動機の面でだった。須坂は優秀な獣医師で、尚美もペットの猫を見てもらっていた。
ところが尚美の目的は須坂自身だったらしいのだ。須坂も尚美の目的に気付いたが、顧客でもあり対応が後手に回った。尚美はだんだんエスカレートしてきて、交際を求めてきた。須坂はきっぱりと断ったが、尚美は諦めなかった。
メールや無言電話での嫌がらせに始まり、佐治くるみにもとに乗り込んだり、メールでの誹謗中傷をしたりと行為はエスカレートしていった。それが動機だというのだが、須坂も佐治くるみも全く身に覚えがないという。そこで綸太郎に相談してきたのだが…

錯乱のシランクス
音楽評論家の喜多島昭寛の行方が分からなくなった。喜多島はオートロック付の高級マンションにひとり暮らしで、ある朝いきなり旅行に出かけると管理人室にメモを入れて、そのまま出て行く姿がエントランスの防犯カメラに残っていた。
それから数日、編集者が連絡が取れないことを心配し綸太郎に相談の上、法月警視まで乗り出して喜多島の部屋を改めることになった。するとそこの完全防音のオーディオルームにガムテープで口を塞がれ、体をグルグル巻きに縛られたパジャマ姿の喜多島の死体があった。死因は長期間の絶飲食による脱水死。
ところが防犯カメラを調べても喜多島の外出姿以外、犯人らしき人物の出入りは一切写っていなかったし、外出した喜多島が戻って来た映像もなかった。

ガニュメデスの骸
知人で女装タレントのロザムンド山崎から呼び出された綸太郎は、三ツ谷勇真に引合された。勇真は秋葉原の女装メイドカフェでバイトをしているが、体つきもしぐさも誰がどう見ても若い女性にしか見えなかった。
しかし勇真の女装はあくまで趣味であり、性同一障害でも、ニューハーフでもなかった。さらに驚いたことに勇真の母親は、今を時めくカリスマ経営コンサルタントの三ツ谷瑞代であった。
瑞代はすでに勇真の趣味を知っており、それに対してはいいとも悪いとも言わないようだが、さすがに世間体を憚り、勇真は家を出て一人暮らしをしていた。その勇真が、最近母親に呼ばれ、ある男に1千万を渡したというのだ。 しかもその金は子供の身代金だという。金を渡す時に、相手の男がそう匂わしたのだ。しかもその相手の男が殺されるという事件が発生した。

引き裂かれた双魚
総合美容グループアフロス会長の碓田可南子は、病死した夫を引き継いでアフロスのトップとして君臨していた。その可南子に接近し食い物にしようとしているのが、詐欺まがいの霊能力者堤豊秋。
可南子は4歳の時に海でおぼれ死んだ一人息子が、20年後に生まれ変わってどこかにいると堤に信じさせられ、堤を使って一人息子の生まれ変わりを探そうとしていた。そして最近3人の候補者が現れ、可南子の希望で堤がセッションを行って生まれ変わりを特定するというのだ。
周囲は反対したが可南子の権力は絶対で、誰も止めることはできない。そこで可南子の甥でアフロスの専務相川は綸太郎に堤のトリックを暴いてくれというのだった。


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