犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題

著者が一念発起して取り組んだ、星座を巡る謎の物語。まずは前篇の牡羊座から乙女座の6編。
ギリシャ羊の秘密
河川敷をねぐらにしているホームレスが深夜に襲われて、暴行を受けた挙句に刺し殺されるという事件が起きた。すぐそばでホームレスに化けて取材をしていた飯田才蔵が気配を察して駆けつけたが間に合わず、逆に殴られて気絶させられた。
飯田の意識が遠のく寸前、犯人の会話を聞くことができた。それによると犯人は男女の2人組と思われた。幸い飯田はすぐに意識を回復し退院できた。飯田によると殺されたホームレスは通称アリョーシャと呼ばれていた。
さらにアリョーシャの住んでいる段ボールハウスには、アリョーシャが大事にしていた本があり、それに押されていたゴム印から、アリョーシャの本名が坂井晴良といい、さらにホームレス仲間の情報から、アリョーシャのは離婚歴があり娘が一人いたが、その娘と最近偶然にも再会したのではないかと考えられた。

六人の女王の問題
小説アフレに1年3ヶ月にわたって連載された「虻原サトルのイ非句入門」という珍妙なコラムが最終回を迎えた。そのときの虻原の句は、「琵琶法師 手を暖めし 羽子板星」と「白衣の裏 死の遊びさえ 虚ろかな」の句で、この句に隠された真意を知りたければ、六人の女王にたずねるがいいとコラムは結ばれていた。
そして虻原は死んだ。マンションの5階からの墜落死だった。問題は墜落したマンションの5階に、虻原とは犬猿の仲の赤星剛志郎が住んでいたことだ。虻原と赤星はかつて同じ劇団に所属していたが、ある事件から犬猿の仲になったという。

ゼウスの息子たち
原稿の締め切りが迫った綸太郎がカンヅメにされたのは、山中湖畔にある四つ葉ホテル。小さいホテルだが、レストランのシェフにはパリの三ツ星レストランで修業した日本人を雇うなど、話題性に富んでいた。
オーナーの藤堂達也と沙織夫妻は、弟妹の和也と香織夫妻とともに、双子同士であった。すなわち2組の双子同士が同時に結ばれたのだった。しかし和也と香織は新婚旅行中に事故死してしまっていた。
達也と沙織はなき和也夫妻を偲んで、ホテルの名を付けたのだった。そんなホテルにチェックインした綸太郎は、担当編集者の南条とレストランで食事をしていると、騒動が持ち上がった。
客の一人が料理に髪の毛が入っていると騒ぎだしたのだ。その騒いでいる客は、自称ルポライター、実際は悪質な恐喝屋の箕面崇であった。あきらかに自作自演だったが、箕面はオーナーに面会を要求してきた。
その夜、綸太郎の部屋を達也が訪れた。相談があるというのだ。そして相談を始めようとした矢先、叫び声が聞こえた。駆けつけると箕面の部屋だった。鍵がかかっていたのでマスターキーで開けると、そこには瀕死の箕面の姿があった。箕面はウィスキーの瓶で殴られていた。そのまま綸太郎の腕のなかで息を引き取ったが、死の直前に「ニセモノにやられた」とつぶやいた。

ヒュドラ第十の首
都内にある染井霊園内で、男の死体が見つかった。蟹江陸朗という男で、先代から上京し、都内で独り暮らしをしていた。鍵が盗まれ、蟹江の部屋は見事に荒らされていた。
部屋からはパソコンが盗まれたほか、犯人はバックアップデータを徹底的に探したらしい。水が腐り、蟹の死骸が入った水槽の中も、ゴム手袋と軍手を二重に嵌めてまで探す徹底ぶりだった。
蟹江の妹は数か月前に自殺していて、蟹江は妹の住んでいた部屋をそのまま借り、家具も入替えずに使っていた。水槽も妹のもので、妹の死後、飼っていた蟹も後を追うように死に、それをそのままにしていた。蟹江は妹の面影を、部屋に求めていたようだった。
しばらくしてデータのバックアップが見つかった。外部の仮想ディスクに保管されていたのだ。それによると妹はヒラトノブユキという男と付き合い、その挙句に妊娠して捨てられ、それを苦に自殺したと記録されていた。
陸朗は妹のかたき討ちを計画し、部屋に移り住んでまでヒラトノブユキを捜した。名簿業者を利用し、ついには3人の候補者まで絞り込んだ。自転車屋の平戸信幸、税理士の平戸伸行、外科医の平戸展之の3人で、犯人はこの中にいると考えられた。

鏡の中のライオン
都内の高級マンションの地下駐車場の車の中で、人気女優仙道美也子の死体が見つかった。紐状のもので首を絞められた上、後部座席に押し込まれ、黒いポリ袋が被せられていた。
死体の見つかったマンションは美也子が住むマンションで、車も美也子のものだった。死体の耳から特徴のあるピアスが片方外れていた。発見者のマネージャーや関係者の情報から、美也子は最近若い脚本家と付き合っていたという。
脚本家の名は滝本吉樹、つい最近ヤングドラマ大賞を受賞し、その受賞作鏡の中の野獣のテレビドラマ化が決定していた。そのドラマの主演が美也子であった。美也子の携帯電話の更新記録から、美也子の最後の電話先が滝本だったこともわかった。
警察は滝本の部屋を訪れ事情を聞いたが、そのときにベッドの下から美也子のピアスの片方を発見した。ところが別の捜査の張り込みが行われており、その張り込みをしていた刑事の証言により、滝本の部屋には事件の合った夜、誰も出入りしていないことが判明したのだった。

冥府に囚われた娘
女子学生北条志穂が、一気に大量の水を飲んで水中毒で倒れ病院に運ばれた。血中の塩分濃度が極端に低下し、身体機能が阻害され、植物状態になっていた。その志穂から携帯メールが複数人に発信されていた。
志穂の母親といとこが交代で付き添っていたが、メールには心当たりもないし、携帯がどこにあるかも知らないという。意識もない志穂の名を、誰かが騙っているのだろうか。
一方、小山田真司とう男子学生が部屋で死んでいるのが見つかった。こちらの死因は熱中症。だが不審な点があり調べてみると、違法ドラッグを大量に摂取した結果、熱中症症状を発して死んだとわかった。
しかし小山田はドラッグとは無縁の世界にいた。どうも誰かが小山田を拘束し、強制的に違法ドラッグを飲ませて放置し、熱中症を発症させ死に至らしめたうえ、死体を部屋に運び込んだらしい。綸太郎は2つの事件にはつながりがあるとつぶやいた。


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