パズル崩壊

WHODUNIT SURVIVAL1992-95の副題、法月綸太郎ものはボーナストラック的な一篇のみ。
重ねて二つ
高層ホテルの27階の客室のベッドの上に死体が横たわっている。上半身は女優で、下半身は男のものだった。いずれも胴の中央部から切断されていた。
この部屋は死体の女優がリザーブしたもので、発見者はその夫の映画監督。映画監督は火事により足を失い車椅子生活をしていたが、10時ごろに妻から呼び出され部屋に入ったところ何者かに後頭部を殴られ気絶した。
1時間ほどして意識を回復するとベッドの上に不気味な死体があったという。しかもこの部屋は別の部屋からカメラマンに監視されていた。カメラマンは女優の密会のスクープを狙っていたのだと言う。
カメラマンの証言では10時ごろに映画監督が女優に迎えられて部屋に入ったのは事実だが、その後死体発見まで出入りした者はいないという。
しかも通報を受けた警察が来るまでカメラマンも映画監督も現場に留まっていた。死体の女優の下半身、男の上半身はどこに行ったのか…

懐中電灯
片桐俊夫と矢島勝は競艇場で知り合って強盗を計画する。
矢島は信用金庫に勤めていて、無人店舗のキャッシュディスペンサーの現金補充の当番の時に、片桐が矢島を襲い現金を強奪して後日に山分けするというのが計画だった。
当日強奪は上手くいくが、矢島とコンビを組んでいた職員が、ショックで倒れて心臓麻痺で死去。やがて矢島にも容疑がかかり出す。片桐は計画どおり数日の間隔を空けて矢島と会い、そして矢島を殺してしまう。
現金は青梅の山の中に隠してあると嘘をついて車で誘い出し、山中で殴打して殺したのだ。奪った金を全て手中にして有頂天の片桐だったが…

黒のマリア
美術商が殺された事務所のドアは内側からロックが二重に掛けられていた。その美術商は盗品買いや詐欺スレスレのあくどい商売をしていて、事務所のソファで仮眠を取っている時にブロンズ像で殴られて殺されたのだ。
事務所を訪れた顧客の通報で、管理人を通じて警察がドアを開け、死体が発見された。部屋を捜索すると大型のキャビネットの中に事務員の女性が、縛り上げられて監禁されていた。
ガムテープで口をふさがれ、キャビネットの扉は外から施錠されていた。事務員はショックのあまり精神に異常を来たし、襲われた前後の記憶はなくなっていた。
さらに事務所に据え付けられた美術品保管用の大きな金庫の中からは男の死体が見つかった。この金庫も外から施錠されており、その後の調べで男は美術品窃盗の常習犯とわかった。
この事務所では3人の人間がある者は死体で、ある者は拘束されてそれぞれ3つの棺に入れられ、外から鍵をかけられて閉じ込められていたのだった。

トランスミッション
僕が寝ぼけた状態のときに掛ってきた電話は誘拐犯人からだった。トモユキという子供を預かっていると言うのだ。相手が掛けたのは安永という家。だが、それは間違い電話だった。
そのことを言う前に、誘拐犯は言いたいことだけを言って電話は切れた。警察に届けることも考えたが、犯人は警察に届けると子供の命はないと決り文句を言っていた。困り果てた僕は…

シャドウ・プレイ
推理作家羽島彰は深夜無遠慮に電話をしてきて、一方的に知りたいことを聞くのが癖だった。こちらの迷惑など考えず、まったくもって自分勝手な男だった。そのときも電話をしてきてドッペルゲンガーの話をしだした。
今書いている本がドッペルゲンガを扱った小説だと言う。電話で迷惑を蒙った腹いせに、小説のさわりでも聞かせてくれと頼むと、羽島はいやいやながらも語り始めた…

ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?
隠者の家と呼ばれるそこは、イカレタ作家が住み麻薬中毒者たちの溜り場と化していた。その作家も麻薬中毒で被害妄想に陥っていてドアには7つの鍵を掛け、窓には鉄格子を入れていた。
その部屋でイカレタ作家が殺された。もちろん7つの鍵は全て内側から鍵が掛り、窓にも鍵が掛って密室になっていた。

カット・アウト
篠田和久と桐生正嗣は、画家を目指して若い頃に渡米して共同生活をしていた。売れない時代2人で激論をし、互いの絵を批評し合い、あるいは励ましあって生活した。
やがて2人の前に現れたのはボディペインティングで踊る前衛芸術家の三島聡子。3人は意気投合して語り合い、やがて愛情が芽生えた。
結局聡子と桐生は結ばれ、篠田は別の女性と結婚。だが原爆の後遺症のためにやがて聡子に死が訪れる。そのとき聡子の遺体には桐生の手によってボディペインティングが施されていた。
それを見た篠田は遺体に対するあまりの仕打ちに桐生と絶縁した。それから17年が経ち、桐生も死去した。篠田は聡子の墓に詣で、桐生の甥の美術教師に会った…

……GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP
ボーナストラック的な一篇。「十日間の不思議」と「長いお別れ」を足して2で割ったような長篇を目指して書き始め、挫折した長篇の第1章。したがってミステリではない。


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