法月綸太郎の新冒険

法月綸太郎の第2短篇集。1996年秋から99年春までに発表された5篇と非小説のイントロダクション。小説5篇はいずれも100枚超のボリュームの力作揃い。
背信の交点(シザーズ・クロッシング)
松本から新宿の向う中央線の特急あずさ68号の車内で男が死んだ。男の名は品野道弘。品野は南小谷から妻晶子とともに先頭の自由席者の一番前に乗り込んだ。
松本到着寸前に車内販売で缶入りウーロン茶を2つ買い、それを松本停車中の飲み、松本発車後に晶子が飲み終えたウーロン茶の缶を捨てに行っている。
品野夫妻のすぐ後ろの席に座った法月綸太郎は、甲府付近で様子がおかしいことに気づき、道弘が死んでいるのを発見。毒殺の疑いもある考えたが、事実とその後の調べでゴミ箱から毒の入ったウーロン茶が一缶発見された。
その少し前に長野駅についた名古屋発の特急しなの23号の車中からも毒を飲んだ死体が発見された。死体の名は西島あづさ。晶子に言わせるとあづさは道弘の浮気の相手だと言う。
晶子はあづさと道弘が心中したのだといい、あずさ68号としなの23号が松本駅で同じホームですれ違っていること知った綸太郎も心中説を支持するが…

世界の神秘を解く男
園山家の少女エリカが心霊少女らしいということで、その道の第一人者を自負する丸山教授とテレビ局は心霊現象特番を製作することに。
エリカの周囲では引出しが自然に開いたり、壁のものが落ちたり、すすり泣きが聞こえたりというポルタガイスト現象が頻繁に起こるといい、その撮影のためにテレビ局やその下請けの製作会社、丸山教授一行が園山家に泊り込む。
なぜならポルタガイスト現象はエリカが寝入った夜中の0時から1時の間に集中して起きたからで、そこには特番の反心霊現象派として法月綸太郎も参加した。
0時が刻々と近づき、人々があちこちで緊張を孕んで待機し始めたとき、突然1階のサロン室で大きな音がした。サロン室は数日前に小火があって封鎖され、ドアには封印もされていた。丸山教授によれば、この小火もエリカの心霊現象によるものだという。
その封印されたサロン室には、数分前に丸山教授が入り、それを物陰で目撃した製作会社のアシスタントがドアの前で様子をうかがっていたら大きな音がしたというのだ。
駆けつけた皆がドアを開くと、シャンデリアの下敷きになって丸山教授が死んでいた。密室の中の死はポルタガイストかと騒がれたが、駆けつけた警察はさすがに事故死と判断した。だが綸太郎は…

身投げ女のブルース
警視庁捜査一課の葛城警部は情報提供者のもとに密かに向かう途中、飛び降り自殺の現場に行き合わせる。
ビルの屋上から今しも女が飛び降りようとしているところで、下の道路には大勢の野次馬が群がり、屋上では通報で駆けつけた近くの交番の巡査2人が説得にあたっているという。
葛城は屋上に向かい、女を説得して何とか助け出す。葛城は保護した女から事情を聞いたところ、女は部屋で人を殺したらしい。
さっそく別の捜査員に連絡して、その女のマンションの向かわせると、そこには後頭部を強打されて絶命した男の死体があった。自殺しようとした女は、男を殺し自身も死のうとしたのだった。
だが、調べてみると女が男に負わせた傷は側頭部のもので、これは致命傷ではなかった。その後、女がビルの屋上から飛び降りようとしていたちょうどその時、誰かが女のマンションに入り込み気絶していた男の後頭部に一撃を加えて死に至らしめたのだった。

現場から生中継
被害者が殺された時刻、その恋人であり容疑者である男は、警察署前のテレビ中継画面のバックに写っていた。テレビ中継は猟奇連続殺人事件の犯人逮捕の日の警察前からのリポートで、その背後にひしめく野次馬の一人が容疑者だった。
その男は中継に写りながら携帯電話を2本架けていたが、1本目は被害者のところでこれは留守録に短いメッセージが残され、そのテープの声紋も容疑者のものと確認された。
その5秒後、容疑者は親友のところに2本目を架けている。親友は部屋にいて、テレビをつけリアルタイムで容疑者の様子を見ていた。
ちょうどその頃に被害者は殺されたわけで、これは被害者のマンションの住人の証言する物音や人の出入りから間違いない。容疑者は鉄壁のアリバイを持っていたのだ…

リターン・ザ・ギフト
遊び人武藤浩二の姉誉子のマンションの部屋に忍び込んで、誉子を殺そうとして失敗し逮捕された新宮和也。逮捕後の自供により和也と浩二は交換殺人を試みたことが判明。
一ヶ月ほど前に和也の妻妙子は八王子の自宅で、忍び込んだ何者かに殺されていた。妙子は交通事故の後遺症で寝込んでいて自由に動くことが出来ず、そのためにさしたる抵抗も受けずに犯人は妙子の息の根を止めていた。
和也と妙子の仲が悪かったことから、同期の面では和也が疑わしいが、和也には出張で仙台にいたというアリバイがあった。
この妙子を殺したのが浩二であるというのが和也の証言だった。和也は数ヶ月前に酒場で知り合った浩二に、交換殺人を持ちかけられたという。
最初は断った和也だったが、浩二は強引に妙子を殺し、今度は姉の誉子を殺すように催促していたらしく、焦った和也が実行に移ったものの失敗したわけだった。
警察はさっそく浩二の住むアパートに向ったが、一足違いでもぬけの殻であった。警察の法月警視はすぐに浩二の行方を追うが…


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