ふたたび赤い悪夢

ラジオ東京の番組に生出演したアイドルタレントの畠中有里奈、本名中山美和子が番組終了後に妙な事件に巻き込まれた。
スタジオを出てマネージャーの湯浅景子とともに局を出ようとしていると、局の人間がプロダクションの社長から湯浅宛に電話が架かっていると呼び止めた。
湯浅は美和子を待たせて電話を受けに行ったが、その間ひとりにされた美和子の所にアルバイトと思われる若い男が近づき、美和子に「母親に関する伝言を内密に伝えたい」と囁いた。
美和子は双子で生まれたが、実の両親は美和子がまだ1つの時に死んでいた。それも尋常な死に方ではなかった。美和子の母親が育児に疲れてノイローゼになり、ある夜美和子の双子の兄をナイフで刺し殺し、父親の頭を散弾銃で吹き飛ばした後で失踪、2ヶ月後に相模湖にその死体が上がった。
警察では母親が失踪後に相模湖に入水自殺したものと断定した。ひとり残った美和子は父親の兄に引き取られてその養子となり、以来実子同様に育てられたのだが、美和子は実の両親のことを知らされていた。
実の母親が殺人犯だったことは美和子の心に暗い影を落とし、やがて自分の血にも殺人犯の血が入っており、いつしか自分も殺人を犯すのではないかと思うようになっていた。
そのことは身内のごく少数の人間以外は知らないはずだったが、見知らぬ若い男から母親に関する伝言と囁かれた美和子は動揺し、男の跡を追いていってしまう。

男に局内の倉庫に連れ込まれ、そこで騙されたことに気づいたが時すでに遅く、男はナイフで美和子に迫って来た。美和子と男は揉みあううちに、男のナイフが美和子を刺し、男がそれを見て「間違いだ」と騒ぎだしたところで美和子の記憶が消えた。美和子が気づくと倉庫の中には自分ひとりだった。
不思議なことに美和子の衣服は血で汚れていたが、美和子の体には傷一つなかった。美和子はそのまま局から逃げて、「月喰荘」事件で知り合った法月警視の自宅に助けを求める電話を入れた。
あいにく警視は仕事で留守をしており、代わりに息子の探偵作家綸太郎が美和子を迎えに来た。助けを求めながら、何も言わない美和子に綸太郎は自宅に美和子を匿った。
そのあいだにラジオ東京近くの公園で若い男の死体が見つかった。その死体の男こそ美和子を襲った男だった。
ラジオ東京でアルバイトをしている学生で、胸を深々とナイフで刺されていた。俄然美和子の立場は微妙なものになった。帰って来た法月警視も話を聞いて美和子をとりあえず匿うことにしたが…
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