パズラー

謎と論理のエンタテインメントのサブタイトル、そして都築道夫へ捧げられた。
蓮華の花
ほとんど無名ながら作家専業になった日能克久は、20年ぶりに高校時代の同窓会に出席することになった。日能は何年か前に新聞で同級生だった梅木万里子が交通事故で死んだという記事を見ていて、同窓会の誘いの電話でそのことを友人だった高柳に言うと、高柳はそんなことはなく梅木は結婚して元気にやっているという。
日能の記憶違いなのだろうか。でも確かにその記事を見たことは間違いない。日能はもどかしい気持ちで同窓会に出席し、そして梅木万里子に会った。

卵が割れた後で
フロリダの大学の日本人研修生斉藤寛之の死体が発見された。場所は大学とフリーウェイを結ぶ田舎道の脇の草むらで、死因は殴られたことによるショック死と鑑定された。近くにはスーパーの袋に入ったポテトチップス、少し離れてバーボンのニューボトルが転がっていた。
状況から斉藤は大学の寮から近くのスーパーに買い物に行った帰りに襲われたらしいが、財布もカードも無事だったが、肝心ないつも乗っていた赤いムスタングがなかった。誰かが乗って行ったらしい。そしてもうひとつ、斉藤の着ていたシャツの肘に腐った卵がぶつけられた跡があった。

時計じかけの小鳥
高校1年の高木奈々が、小学校からの同級で親友の栗田満智子と下校途中、久しぶりに三好書店の前を通った。三好書店は、彼女たちが小学生だった頃に、よく立読みをしては店主のタヌキさんにはたきで追い払われた思い出が懐かしい店だが、中学以降通学路が変わってしまってからは、まったく行くことがなかった。
その懐かしい書店に立ち寄ろうとすると、なぜか満智子がいやな顔をし、代わりにお好み焼き屋に誘った。付き合った奈々は帰りに三好書店により、そこでクリスティの文庫を買った。かなり古い版で、今の店主でタヌキさんの息子のパンダさんはやる気がなさそうに袋に入れた。
家に帰ってページを繰ると、なかから1枚のメモが現れた。すべてカタカナで「ミヨシショテンニコレヲウレ」と書かれていた。そして一番最後のページにはメモ的な書き込み。しかもその書き込みは、筆跡や特徴から奈々の母親のものだった。
それから奈々の回想が始まった。たしか三好書店では、奈々が小学4年のときの5月14日にタヌキさんが店番中に心不全で死んだはずだ。なぜそれを覚えているかというと、その日奈々は学校をさぼり、満智子の家で同級生4人で遊びほうけていた。そして夕方、家に戻ると母親が激しく怒り、ぶたれたのだった。
後にも先にも母親にぶたれたのはその時だけだった。そしてそれが引き金になって、奈々の教育方針を巡り両親が対立し、奈々が小学6年の時にとうとう離婚してしまったのだ。今日、三好書店で買ったクリスティの本の書き込みには、その日に購入したことが記されてあったのだ、それも母親の字で…

贋作「退職刑事」
事件は東京中野で起きた。37歳になる能代菜々美という主婦が、自宅でパンティストッキングを首に巻かれて殺されていたのだ。上半身はTシャツ、下半身は下着姿で、着替えのためにパンストを脱いだところを襲われたらしい。
犯人はわかっていた。練馬に住む無職の阿宮祐吉、菜々美の元夫だった。阿宮の勤めていた会社が倒産するや、菜々美は阿宮と離婚し、すぐに今の夫能代と再婚していた。菜々美は夫には必ず収入があるべきと考えていて、無収入になった夫にはまったく興味がないと周囲にも公言していた。
阿宮の会社が危ないと知ると、すぐに他の男を捜しはじめた。それが能代で、阿宮との離婚前から一人息子の晴敏にも引き合わせるほどドライに行動した。阿宮はそのことを知ると烈火のごとく怒り、菜々美だけは許せないと周囲に漏らしていた。
事件の日、昼過ぎに能代は学校に晴敏を迎えに行き、2人で映画を見たあと食事をして家に戻った。これは菜々美に頼まれての行動で、家に戻ったところ菜々美の死体を発見したわけだ。
一方、阿宮は犯行を認めていた。阿宮はその日の午後2時に菜々美が訪ねて来るはずだったが、不意を襲うためにその前に菜々美の家に行き、そこで言い争って名菜々美を殺してしまったというのだった。
一見なんでもない殺人事件の様だが、何か引っかかるものがある。それに菜々美のキャッシュカードが奪われて、銀行から全額引き出されているのだが、防犯カメラの映像から、引き出したのは阿宮ではなかった。現職刑事の父親の元刑事は、話を聞いてある推理を組み立てた。

チープ・トリック
街の嫌われ者の高校生スパイク・フォールコンが首を切られて殺された。場所は街から車で1時間、荒野の中に立つ廃教会。だがスパイクは密室状態で殺されたのだった。
その夜、スパイクはいつものように愛車ピンク・キャデラックに舎弟分のブライアンとゲリーを乗せてレイプの相手を物色していた。引っかか同級生のナタリー・スレイド。キャデラックに引っ張り込んで教会に連れてきた。
ナタリーは隙を見て教会内に逃げ込んだ。この教会はスパイク達がいつもレイプに使う場所で、入口を除いて全ての窓やドアは外から釘づけにされており、中からは逃げ出せないようになっていた。
スパイクはいつも獲物を教会内に追い込んで袋の鼠にし、そこにキャデラックを乗り入れて獲物を追い詰めレイプするのだった。だが、この日は違った。
キャデラックは教会の祭壇にぶつかって停まり、唯一の光源のライトが消えてしまった。スパイクはナタリーを捜しまわり、教会の唯一の入口は舎弟が見張った。
さらに舎弟の一人がスパイクとともに教会内を捜しまわったが、ナタリーは発見できず代わりに首を切られたスパイクの死体が見つかったのだ。

アリバイ・ジ・アンビバレンス
ひょんなことから深夜の駐車場の車の中で寝ることになった高校生の陽一は、夜9時ごろ隣のスペースに外車が入ってくるのを見た。車から降りたのは中年の紳士と同級生の刀根館淳子。紳士は駐車場の一角に建つ蔵の鍵を開けて、淳子とともに入って行った。2人が蔵から出て車で去って行ったのは2時間半あまり経った11時半過ぎのことだった。
陽一が事件を知るのは翌々日のことだった。刀根館の家で陽一の同級生高築敏朗が包丁でめった刺しにされて殺されたのだ。犯人は淳子で、本人もそれを認めている。淳子が家に一人でいたところ、敏朗がいきなり侵入してきて暴行されたというのだ。
淳子はされるがままになっていたが、終わったあとの隙をついて敏朗を刺殺してしまったというのだ。だがその時間を聞いた陽一は驚いた。犯行時刻はまさに陽一が駐車場で淳子を見た時刻と一致するのだった。


島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -