七回死んだ男

高校1年生の大庭久太郎は大庭道也と加実寿夫妻の三男。久太郎は不思議な体質の持ち主で、ときどき1日を9回繰り返すという日があるのだった。
ある日、朝起きてから夜の12時までの生活が終わると、再びその日が同じように繰り返され、9回を持って終わり初めて翌日に入るのだ。
もちろん久太郎以外にはその日は1回しかないわけで、9回の反復は久太郎だけが認識するのだった。9回のうち久太郎の意思が働けば、最初のオリジナルの出来事を、変える事も可能だった。
久太郎は高校の入学試験の日が、その反復の日にあたり、9回試験を受けたが問題はわかっているので9回目には満点で入学試験をパスし、神童と騒がれたほどであった。
このようにオリジナルの出来事を変えた場合は、最後の9回目の出来事が確定版として世の中での出来事になるのだった。つまり久太郎には歴史を変える事もできるのだった。
ただ問題は、その反復がいつ起きるのかわからないことだった。月に数回のこともあれば、数ヶ月間起きないこともあった。

そんな特異体質の持ち主の久太郎は、毎年正月に長兄冨士高、次兄世史夫と母親加実寿とともに、祖父渕上零治郎のところに年始に行き一泊するのが恒例だった。
渕上零治郎はもともとギャンブル好きな洋食堂の親爺だったが、いまやレストランチェーンのオーナーになっていて、その資産は莫大であった。
零治郎には長女加実寿、次女胡留乃、三女葉流名の3人の娘がいたが、加実寿と葉流名の2人は駆け落ち同然に結婚して早々に零治郎のもとを逃げ出し、次女の胡留乃が結婚もせずに食堂を支えてきていた。
それが零治郎がギャンブルに勝ってあぶく銭を儲けたのがきっかけで、食堂からあれよあれよという間にレストランチェーンに成長してしまったのだ。
こうなると縁切り同然だった加実寿も葉流名も、零治郎の莫大な遺産に目を向け、数年前から加実寿一家、葉流名一家とも正月に零治郎の家に年始に訪れ、媚を売っているというわけだった。

さて、今年も年始の席で零治郎は加実寿の3人の息子、葉流名の2人の娘、それに秘書兼運転手の槌矢、レストランチェーンの社長におさまっている胡留乃の秘書の友里の7人の中から、独身の胡留乃の養子を決めその人間に遺産を全て譲るという宣言をした。
それとともに俄然親族間の争いが激しくなるが、正月1日はそのままだらだらと新年会が続けられ終わった。翌日の2日久太郎はゆっくりおきて零治郎の酒の相手をさせられ、酔って寝てしまう。
目が覚めると零治郎はおらず、泥酔状態のまま兄達と車に乗せられそのまま寝込んでしまった。再び目覚めると2日と同じことが始まっていた。正月2日が反復の日に当たったのだった。
ところが、その2回目の2日に久太郎は零治郎と酒を飲むことを避けた。すると零治郎が花瓶で頭を殴られて殺されてしまった。
オリジナルとあまりに違う出来事に久太郎は驚愕し、翌日から零治郎が殺されないようにいろいろと画策するが、そう画策しても零治郎は殺されてしまうのだった。
いったいなぜ毎回オリジナルと違う出来事が起こるのだろうか…
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