完全無欠の名探偵

財閥白鹿毛グループ総帥の白鹿毛源衛門には娘が2人いたが、源衛門が目の中に入れても可愛がっていたのは、死んだ娘が残した孫の白鹿毛りんであった。
何不自由なく暮らしていけるはずのりんだが、大学は高知大学を選び、卒業しても東京に帰らずに自分でさっさと安芸短期大学の事務員の職を決めてしまった。
安芸短期大学は昨年新設されたばかりの学校で、開校は地元の悲願ではあったが、辺鄙なところにあるために学校のこれからの運営には厳しいもの予想された。
りんが何故そのような辺鄙なところの短大の事務員になったのかは誰にもわからず、源衛門は気も狂わんばかりだった。源衛門はりんが一刻も早く帰ってくることを願い、有能な秘書の黒鶴に相談をする。
黒鶴が探りを入れると、りんには高知で何かを遣り残していて、そのことが気になって仕方なく高知に職まで得たらしい。だが、その気になることというのは黒鶴にもわからなかった。

そこで黒鶴は、白鹿毛グループの持ちビルSKGで警備員をしている山吹みはるを高知に派遣することを提案する。山吹は身長2メートル近い、ぼーっとした風体の大男であったが、特殊な能力を持っていた。
山吹のその能力とは、話している相手の潜在意識を言語化させることが出来るのだ。山吹と話をしだすと、いつの間にか口が軽くなり、自分で話す意志のないことも舌が勝手に動いて喋ってしまうのだ。
そして全てを語り終えた後、話した本人はふと違和感を覚え、それを手掛かりに長年忘れていた出来事の真相に自分で到達するのだった。
例えば白鹿毛源衛門は山吹の前である夜の愛人の行動を話す。源衛門が愛人のマンションを出た後で、忘れ物を取りに行くと愛人は階段を掃除していた。
話し終えた後、源衛門は愛人が階段にビー玉を転がしておき、源衛門がそれで滑って階段を転げ落ちて死ぬことを狙っていたのではと推理し、そう考えると愛人の行動や様子の全てが合理的に説明できることを悟るのだ。
だが、山吹本人はそんな能力があることなどまったく意識しておらず、ただ相手の話を聞いているだけだった。
黒鶴は、この山吹の特殊能力を使ってりんが高知にいたい理由を探らせようとする。そして山吹をりんと同じ安芸短期大学の事務職に政治力で転職させた。
高知に行った山吹の前で、その周囲の人間たちはいろいろなことを話し始め、自分で推理し長年隠されていた真相に思い至り始めた。が…
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