覇王の死

浮浪者同然の状態だった青木俊治が、上野公園でピエロに渡されたビラを頼りにたどり着いたのは、毒島法律事務所。そこで青木は毒島弁護士に自分の命を売ることにしたのだ。健康診断にも合格した結果、青木は毒島の命を受けて能登半島にある眞塊村に行くことになった。
眞塊村は鎌倉時代の初期に、平家の落人を追ってきた源氏一党がそのまま土着したところで、通称お城といわれる蛇神屋敷に住む邑知家当主が絶対的な権力を持っていた。
今の邑知家当主の大輔は、戦時中には軍部を裏から動かしていたほどの人物であったが、現在は80歳を超えており、しかも病に臥せっていた。なお悪いことに大輔の男の子供や孫が相次いで死亡し、今では孫娘のみねりがいるだけだった。
そこで大輔は邑知家を存続させるために、遠い繋がりでもいいから血族を捜し、みねりと結婚させて家を継承させようと考えた。そこに一枚噛んだのが毒島だった。毒島はすでに邑知家の血族である尾崎智仁という人物を探し当てていた。
ところがその智仁が山で遭難して死んでしまったのだ。そこで智仁によく似た人物を傀儡に立て、邑知家を乗っ取る計画を立てた。その傀儡に選ばれたのが青木だったのだ。
聞けば邑知家は眞塊村の絶対的な支配者であるばかりではなく、莫大な財産を所有し、しかも村内には徳川幕府の埋蔵金が隠されているという。金に目がくらんだ青木は毒島と組んで、尾崎智仁になりすまし、邑知家を継ぐべく眞塊村に向かったのだ。
だが青木の心の中は決して平静ではなかった。というのは悪魔ラビリンスが邑知家に復讐を企てているというのだ。というのはラビリンスや双面獣の生みの親ともいえるのが邑知大輔だったからだ。
悪魔ラビリンスが狙う邑知家に単身乗り込んだ尾崎こと青木の運命はどうなるのだろうか。ちょうどそのころ眞塊村の隣村であるニューホーリー村では奇怪な事件が相次いで起きていた。
ニューホーリー村は、戦後祖国に絶望したアメリカ在住者が渡ってきて、邑知大輔の好意で土地を提供され、開拓された村だった。ニューホーリー村には村長もいたが、村の成立経緯から邑知大輔の権威は絶大で、キングと呼ばれていた。
その村で村人たちが次々に狂いだしのだ。ある者は悪魔を見たと言って家に閉じこもり、ある者は狼に襲われたといって銃を撃ちまくり、ある者は宇宙人が水に溶け込んで人体に入り体を乗っ取っていると騒いだ。
そしてついに村の善良な老人の家で、2人の若い男女が首をねじ切られて殺され、首は行方不明となり胴体は、庭木の枝に串刺しにされるという陰惨な殺人事件が起きた。しかも家の持ち主の老人も、密室状態の家の中で首を括って死んでいたのだった。


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