クロへの長い道

渋柿信介、6歳の幼稚園児が探偵として難事件を解決していく、ハードボイルドタッチの短篇集。
縞模様の宅配便
信介が友達の鈴木あきらの家に遊びに行くと、縞模様のゼブラ便の宅配車が停まっていた。信介の姿を見ると、母親はちょっと狼狽したようになり、あきらの留守を告げた。信介は近くの公園からあきらの家の様子を見ていると、あきらの母親は宅配便の車に乗ってどこかへ行ってしまった。
1時間ほどしてあきらは母親とタクシーで帰宅し、2人はそそくさと家の中に入ってしまった。このことが信介の家で事件ではないかと問題になった。刑事をしている信介の父親によれば、最近誘拐事件が頻発しているという噂があるのだそうだ。噂で済んでいるというのは、被害にあった親たちが警察に届けるどころか、協力すらしないというのだ。
ただ警察では確かに誘拐が起きていると確信していて、信介の父親も捜査にあたっているのだった。そこで探偵にあこがれる信介の母親で元アイドルのルル子は、信介にあきらの家が取引している銀行を調べるように命じ、独自に捜査をすることにした。

クロへの長い道
信介の友達のイクコちゃんが可愛がっていたクロという犬が、横暴な父親によって捨てられてしまった。父親によればクロはうるさく吠えるうえ、飼う時の約束だった散歩や犬の世話などをイクコがサボるので、イクコが幼稚園に行ってる間に捨ててしまったというのだ。
その代わりにイクコの父親はピートという、ピンク色をした痩せこけた犬をイクコに与えたが、クロが大好きなイクコはピートも父親も大嫌いになり、父親とは口もきかないようになってしまった。そしてイクコは信介にクロを捜してくれるように依頼してきたのだった。

カラスの鍵
テレビ局の使われていないスタジオで、掃除婦の死体が見つかった。状況から何者かに殴られて殺されたと思われ、使われてないスタジオのセットの裏に死体が置かれたために、発見時死後8時間以上は経過していた。この死体発見とほとんど同時に、宝石盗難事件が起きていた。
お宝鑑定団という番組に出される予定だった「カラスの鍵」というダイヤが盗まれたのだ。カラスの鍵はカラスの形をした不格好な石の上の、大粒のダイヤモンドが2個取り付けられたもので、アクリル製の箱に入れられていた。箱には空気穴があけられていはいるものの、錠がかかり蓋に封印までされていた。
いわば密室ともいえる箱の中に入れられていたのだが、それが見事に消えていた。箱には汚水がかけられていて、空気穴から汚水が入り込んで中にも溜まっていた。それ以外は錠も封印も異常はなく、箱もすり替えられてはいなかった。密室上の箱からの宝石盗難事件と掃除婦殺人事件は、どう関係するのだろうか…

八百屋の死にざま
公民館2階の体育室は、その日少年クラブが貸切っており、中ではクラブの少年少女がドッジボールの練習をしていた。そこで殺人事件が起きた。
被害者はクラブのコーチで八百屋の主人羽田陽助で、用具室の中で鈍器で頭を殴られて殺されていた。殴られた場所から自殺は不可能で、凶器も現場になかったことから殺人であることは間違いなかった。
用具室は体育室の奥まったところにあり、羽田は子供たちに指示をしたあと用具室に入っていったという。そしてそこで殺されたのだ。
問題は誰が犯人かより、どうやって殺したかだった。用具室に通じる体育室には13人の子供たちがいたし、用具室の窓には格子がはまっており、たまたま工事をしていた作業員が窓を常時監視している状況だった。子供たちも工事人も誰も用具室には出入りしていないと証言した。現場は密室だったのだ。


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