名探偵 水乃サトルの大冒険

二階堂蘭子と並ぶシリーズキャラクター水乃サトルの推理傑作集。
ビールの家の冒険
福島県にある東吾妻山の麓にひっそりと1軒のログハウスが建っていた。周囲には何もなく、道路からも奥まっているところにあり、利用されている形跡もなかった。
そこにやってきたのは福島県警の甲斐忠夫刑事。といっても仕事ではなくプライベートであった。登山が趣味の甲斐は友人と東吾妻山に向かったのだが、この日は一般的なルートではなく裏道から登ることにしていた。
その途中で友人が腹痛を起こし、トイレを借りるためにやってきたのだ。甲斐は以前にもこのルートで登山したことがあり、そこにログハウスがあることも知っていた。
ログハウスは当然無人だったので、悪いこととは知りながら石で窓ガラスを割って侵入した。そしてトイレを開けてびっくり。トイレの中には箱に入ったエビスビールがぎっしりと詰め込まれていたのだ。
調べてみるとげた箱やクローゼット、天袋、押入など中には箱に入ったエビスビールだらけ。キッチンには古びた冷蔵庫もあったが、その中もぎっしりエビスビールだった。
試しに甲斐と友人は3本ほど飲んだが、ごく普通のビールであった。いったい誰が何の目的でビールをため込んだのか…

ヘルマフロディトス
女子高の2年生宇佐美沙子とその家庭教師西郷架緒里の死体がモーテルで発見された。美沙子は背中からナイフを刺され、一方美沙子の手にはガラスの灰皿が握られていて、その灰皿で架緒里が撲殺されていた。
警察は現場の状況から架緒里が美沙子との恋愛に悩み、美沙子を刺殺しようとして抵抗されて、現場にあった灰皿で撲殺されたと判断した。
だが馬田刑事は架緒里のことをよく知っており、絶対に架緒里は人を殺せるような人間ではないという。そして手掛かりとなる美沙子の日記を水乃サトルに見せて、架緒里にかけられた疑いを解いてくれと頼んできた。
美沙子の日記は女子高生らしく、所属するテニスクラブの先輩香取ユリアに対するあこがれから恋、母親に家庭教師をつけられたこと、その家庭教師が架緒里という女のような名前なのに実際はかっこいい男であり恋愛関係に陥ったことなどが書かれていた。

「本陣殺人事件」の殺人
岡山に作られた小さなテーマパーク横溝正史村に、視察と打ち合わせのために出張した水乃サトルと美並由加里。
正史をほとんど知らない由加里はどうということもなかったが、サトルの方は園内に作られた正史の小説を模した建物やモニュメントに感動の連続。
とくにテーマパーク側が力を入れている本陣殺人事件の離れ屋と庭には心底から感動していた。自慢の施設を褒められて、テーマパークを作った網山膳之助も顔をほころばせた。
膳之助はこの地方の大地主であったが吝嗇家でもあった。その膳之助が突然私財を投じ、しかもそれを湯水のごとく使って横溝正史村を建設しだしたのだ。
膳之助には子供がなく、若いころからのファンであった横溝正史のテーマパークを作って、遺産を相続人である3人の甥に残そうとしたと説明されていた。
一方甥の3人は兄弟仲が悪く、テーマパークに投ぜられると遺産の取り分が減るので渋い顔。膳之助の方はそんな甥たちを見て、自分の死後は仲良くやってほしいからテーマパークを残すのだと諭した。
さて、その夜サトルと由加里は園内に泊まったのだが、なんと本陣の離れで膳之助が本陣殺人事件通りに日本刀で殺されるという事件が発生した。
サトルは現実の事件の発生に大喜びだったが、由加里に本陣殺人事件のトリックは実際には不可能で、可能にするには別のトリックを用いなければならないと謎のような言葉を告げた。

空より来たる怪物
古代のピラミッドと目される長野市松代にある皆神山の麓で、奇怪な事件が続発した。オレンジ色のUFOが確認されたり、不気味な姿をした宇宙人が目撃されたりし、ついには山菜取りに入った人間が宇宙人と思われる怪物に襲われて大火傷を負った。
その被害者が家出手当てを受けて療養中、今度は夜中に白色の光が庭に満ちたかと思うと、影が押し入ってきて被害者を黒焦げの死体にして去って行った。
これらの事件が宇宙人の仕業と信じるサトルの学生時代の先輩3人が皆神山で調査を開始したが、折悪しく豪雨に見舞われ、土砂崩れまで起きた。
その間に3人は宇宙人に襲われて、そのひとり三島が山腹に建てられたコテージの中で宇宙人に焼き殺された。しかもそのコテージは天窓を除いて窓もドアも内部から施錠され、周囲は崩れた土砂で埋まり、その土砂には足跡がなかった。天窓から脱出できるような状態ではなく、不完全ながらもコテージは密室同様だったのだ。


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