悪魔のラビリンス

二階堂蘭子が活躍する中篇連作集で、いずれも雑誌「メフィスト」に発表されたもの。第3部の「解けゆく謎 深まる謎」は「ガラスの家の秘密」の最終章のラストを独立させたもの。
寝台特急「あさかぜ」の神秘
切断奇術や消失奇術などの大仕掛けを得意とし、腹話術でも人気のアメリカ帰りの奇術師「悪魔サタン」のもとに、魔王ラビリンスと名乗る人物から命を奪うという脅迫状が届いた。
サタンは西村探偵事務所に警護を依頼し、西村所長自ら身辺警護にあたった。昭和44年11月初旬、サタンは寝台特急あさかぜの個室寝台で九州に移動することになった。
サタンはまだ寝台列車を利用したことがなかったので、1号室と2号室を確保し、2号室には奇術道具を入れて九州に向かう手はずであった。
東京駅に列車が入ると1号車の個室のドアを見通せる位置に西村が立ち、1号室にはサタンが入った。助手の上野リリカが、スーツケースの1号室から2号室に移し、サタンにほかの用事がないかを確認して列車を降りた。
リリカは飛行機でマネージャーとともに九州に向かう予定だった。定刻になりホームからリリカの見送りを受けてあさかぜは東京駅を離れた。
次の停車駅の横浜を出て車掌が検札に来たが、1号室は鍵がかかっているのに応答がなかった。慌てた西村の要請で車掌が合鍵を使って1号室を開けたが、そこにはサタンの姿はなく代わりに上野リリカが刺殺死体となって転がっていた。
リリカを刺したナイフには毒物が塗られていて即死状態であった。西村はあさかぜの走行中1号室のドアから目を離したことはなかったし、その間個室の前を通ったものもなかった。窓はもちろん開かない構造だった。
走行中の列車の監視下にあった鍵のかかった個室寝台という三重の密室で起きた人間消失と殺人事件という前代未聞の事件に、魔王ラビリンスの挑戦を受けた二階堂蘭子は…

ガラスの家の秘密
四方城ガラス産業は千葉県館山近くの野津町に本拠を置き、野津町はガラス産業で潤い、さながら四方城家の企業城下町のようであった。
その四方城家の野津町の海岸そばにある屋敷の地下に、広壮な人工の鍾乳洞が作られており、そこに体の一部を切り取られた裸体の男性の氷漬けの死体が幾体もあるのが発見された。
この猟奇的な事件に四方城家の方では、地下にそのようなものがあることすら気付かなかったととぼけたが、さすがに警察も二階堂蘭子たちも引き下がらず、四方城家では北海道の別荘にいる四方城ガラスの社長の晋太郎とその父親で創業者の春近に連絡を取ることにした。
別荘には電話もテレビもないというので、社員が急ぎ出張して現地の道警の刑事とともに別荘に向った。そこはガラスの家と呼ばれ、ドアなどごく一部を除き家全体が二重のガラスで覆われた建物だった。
ところがガラスの家は電気が付いているのに、いくら呼び鈴を鳴らしても応答がない。玄関も窓も全て内側から錠が掛けられていた。
社員が刑事を案内し、乾燥室の窓をまきで割って内側のクレセント錠をはずして中に入った。すると家の中は割れたガラスで足の踏み場もない状態だった。
ガラスの家は家の中の仕切りにもガラスが多用され、ステンドグラスも多かったが、それらがことごとく割られていたのだ。この異様な光景に刑事は社員を外にとどめて家の中を捜索し、椅子に縛られて喉をナイフで切り裂かれた春近とそのそばで全裸になって胸をナイフで刺した晋太郎の死体を発見した。
状況から晋太郎が春近を椅子に縛りつけて喉を切り裂いて殺し、全裸になって自殺したと思われたが、現場を見た二階堂蘭子は悪魔ラビリンスによる他殺だと主張した。


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