ユリ迷宮

館消失ものの傑作「ロシア館の謎」、密室殺人もの「密室のユリ」、コントラクトブリッジを扱った中篇「劇薬」の3篇からなる二階堂蘭子作品集。
ロシア館の謎
時はロシア革命直後、国内は白軍と赤軍に分かれての内戦状態、場所は極寒のシベリアでのこと。
ドイツのスパイであったシュペアは、白軍内に潜入していた。白軍の任務を帯びて極東に向かう途中、前方に赤軍がいるとの情報を得て、途中で汽車から飛び降り「吹雪の館」に向かう。
「吹雪の館」は山脈の麓の森の奥、古い湖だった丸い窪地に建っていた。そこには白軍の将軍と一人の女性…のちに処刑された最後の皇帝ニコライ2世の皇女とわかるが…が隠れるように暮らしていた。
周囲からは隔絶され、森の奥の窪地にあるために周りからは容易に見えず、地下には多くの武器弾薬や食料が蓄積されていた。
シュペアは何日かを「吹雪の館」で過ごすが、やがて皇女が拉致されてしまう。シュペアは吹雪の悪天候の中をトナカイの橇で皇女を追い、途中で皇女の乗っていた橇のみ発見し、むなしく引き返す。
ところが「吹雪の館」が建っていた場所には何もなかった。館は燃えたのでもなければ、シュペアが他の似た場所と勘違いしたわけでもない。いったい「吹雪の館」はどこに消えたのだろうか…

密室のユリ
推理作家生田百合美が自宅マンションの3階の部屋で殺害された。口述筆記の途中に訪ねてきた犯人に殺され、その様子がテープに全て録音されているという珍しい状況だった。
だがテープの声だけでは犯人は誰かわからなかった。さらに現場の部屋はドアに鍵とチェーン錠がかかり、ベランダに出る窓にはクレッセント錠が掛っていた。
部屋は3階だからベランダからは裏庭に下りることは不可能ではないが、裏庭に足跡はなく、裏に出入りすること自体も容易ではなかった。
そしてこのマンションはオートロック式で、1階には警備員がおり、警備員によれば殺害が実行されたと思われる時刻に出入りした不審な人間は一人もいなかった。百合美が殺されていた現場は厳重な密室であったのだった。

劇薬
不動産業と金融業を営む長坂善蔵を恨むもの多かった。妻秀子は長年虐げられてきたことを恨み、長男晋也は金銭面での援助をしてもらえないことを恨んでいた。
さらに甥で不動産会社専務の吉川は会社の金を横領したことがバレ、顧問島内は仕事上のへまを咎められ、コントラクト・ブリッジ協会の会長藤谷は体の関係を迫られ、主治医の伊藤は詐欺同然に金を取られ、それぞれ善蔵に恨みがあった。
そんなある日のこと善蔵のもとに脅迫状が来た。半年後に命を奪うというのだ。善蔵は吝嗇で自分勝手、人のことなど全く考えない人物なのでその脅迫状も破き棄て無視した。
1月後に同じ脅迫状が届いた。文面はほとんど同じだったが、死までの機関は5ヶ月になっていた。さらにその1月後にもというように毎月その脅迫状が届いた。
そして死の予告の月、ついに善蔵はブリッジで知り合った蘭子の下に事件の犯人探しを依頼してきた。善蔵は容疑者達全てを自宅でのブリッジ・パーティに招待するという。その席に蘭子と黎人も招待するので、容疑者たちを観察して脅迫状の送り主を指摘して欲しいというのだ。
蘭子は引き受けたものの、当日は所要で出席できず黎人が一人でパーティの参加した。その席で善蔵は砒素で毒殺されてしまう。
当日親知らずを抜いた善蔵は固形物は一切口にせず、飲み物を飲んだだけ。そして飲み物には砒素を混入するのが不可能とわかった。蘭子はポアロ張りにブリッジの得点表を見ながら衆人環視の中で行われた殺人事件を推理していくが…


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