奇跡島の不思議

茨城県沖の鹿島灘に浮ぶその無人島は、もともと鬼石島といったが、戦前に地元財閥龍門家の所有になり、奇跡島と呼ばれるようになった。
龍門家の娘有香子は島に白亜の館と呼ばれる壮麗な宮殿風の建物を建て、古今東西の美術品を集め、取り巻きの男達を侍らせて酒池肉林の怠惰な生活を繰り広げていた。
しかし、白亜の館と同じ敷地内にあり断崖絶壁に沿って建てられた暁の塔の最上階の部屋で、ある朝有香子の首なし死体が見つかった。
死体は体の特徴や指紋から有香子であることは間違いなかったが、塔への足跡は有香子が塔へ向かったものと、発見者が往復したものしかなかった。
死体の発見者は取り巻きの一人で、朝早く塔にいる有香子のもとに忍んでいったら、すでに有香子は首なし死体となったいたのだった。
有香子が死んだのはその日の未明、午前1時ごろとされた。しかし、その時間にはほとんどの人間にアリバイがあった。この事件はスキャンダルになる性質のものだったが、龍門家が金と政治力で事件自体をうやむやにしてしまった。
それ以来、島は無人となり、白亜の館は膨大な美術品とともにそのまま残されていたのだった。

龍門家の当主が死亡し、跡を継いだ人間は奇跡島の白亜の館と美術品を調査することにし、その調査を県立美術館の権堂に依頼した。
権堂は自身の出身大学如月美大の美術クラブミューズの後輩に声をかけ、クラブの8人の人間とともに1週間の予定で白亜の館に滞在し美術品の目録を作ることになった。
その期間は本土と一切の連絡は途絶し、島に皆を運んだ船も1週間しなければ迎えに来ない。島は漁場や航路からも外れていて船影すら見えることはない孤島だった。
この島に滞在するのは権堂とミューズの部員8名、それに龍門家から派遣された賄の夫婦だけのはずだった。だが、船が島に向う途中に奇跡島の洞窟を探検すると言う風来坊が一人、ゴムボートで漂流しているのを助けて島に運んだので、全部で12名になった。
ただし風来坊は白亜の館とは反対側の洞窟で野宿をするので、白亜の館には11名が滞在した。さっそく美術品の調査が始まるが、その滞在者が次々と殺されていく。
しかも殺されるたびに、ワックスドールと呼ばれる蝋で作った小さな人形の首がへし折られているのだ。人が減るたびに滞在者たちは疑心悪鬼に陥り、憔悴と憎悪の渦に飲み込まれていく…

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