諏訪湖マジック

JR高崎線大宮駅のから2キロほど高崎よりの陸橋から中年の男が普通列車に飛び込んだのが事件の発端だった。ところが、その中年男を調べてみると、死後2日ほど経過していて、しかも手首が切断されていた。
誰かが死体を陸橋から投げ落とし、列車に轢かせたのだ。男の身元は不明、ただ着ているものはホームレスが着るようなものであった。しかし警察は身体の特徴から、ホームレスの風を装わされたのだと睨む。
ほかにこの事件に関連があるかもしれないこととして、2ヶ月ほど前にもまったく同じ電車にノイローゼの主婦が飛び込み自殺したことと、3日ほど前に大宮公園でホームレスが一人殺されたことくらいであった。

この事件の被害者の身元は暫く不明のままであったが、ひょんなことから判明した。諏訪市に住む資産家の郷土史家安場昭一であった。安場昭一の名が出たのは水乃サトルからだった。
サトルは旅行者に勤める名探偵で、そのサトルが諏訪に出張に行ったときに、同じ旅行社の諏訪支店に勤める安場今日子から父昭一の行方不明とその探索を相談され、サトルがそれを引き受けたのだ。
サトルは警察関係の知己を頼り、身元不明死体をあたったが、その一つに大宮の轢死体があったのである。安場昭一は武田信玄の墓を探すことに打ち込んでいて、今日子に信玄の墓を見つけたと電話してきて以降、消息が不明となった。

諏訪市では信玄の墓が諏訪湖底にあるという伝説をもとに、武田信玄水中墓記念館の建設が決定されていたが、反対派と賛成派が激しく対立し賛成派は政界工作までして記念館の建設を強行しようとしていた。
昭一は郷土史家として信玄の墓が必ずしも諏訪湖にあるとは考えていなかったが、賛成派に入っていて記念館建設委員会の顧問を務めていた。
賛成派のトップは市議会議員の安場正二で、正二は昭一の弟であり、今日子の叔父であった。サトルは行きがかり上、事件の捜査を始めるが、記念館の紛争が事件の背後にあると睨む。
警察も同じ方針で捜査にあたっていて、事件の動機は昭一が信玄の墓を発見したために、それによって記念館建設が頓挫してしまうことを怖れた賛成派の犯行ではないかと推理した。
したがって犯人として浮かんだのは正二の会社の関係者。ところがその会社の土橋という東京支店の会計主任が、東京の埋立地の倉庫で殺されるという事件があった。
土橋が殺されたのは昭一の死体が陸橋から電車に投げ落とされた翌早朝のこととわかった。土橋が昭一を殺して、その後に何者かに殺されたのだろうか?
倉庫内を捜索すると、その推理を裏づけるように、倉庫内が昭一殺害の現場である痕跡が見つかった。そして土橋の殺害現場に記念館建設委員のバッジが落ちていた。
バッジのない委員を探っていくと、そこで浮かんだのは2人。一人は諏訪市の観光課長、もう一人は正二の息子の洋輝。洋輝は今日子のいとこであり婚約者でった。
サトルは洋輝が怪しいと睨むが、洋輝は昭一と土橋の両被害者の事件ともアリバイがあった。昭一の事件のときには長野の工場にいたし、土橋の事件のときには長野のホテルにいたのだ。

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