聖アウスラ修道院の惨劇

長野県野尻湖畔にある聖アウスラ修道院は、明治の頃に聖アルノード・ヴリュコラカス師が、その教えでカトリックに改宗した紡績富豪大河内嘉江門に莫大な金を出させて作られた修道院であった。
院内には寄宿制の学校もあり、孤児や私生児や素行に問題のある少女を預かっていた。昭和43年の夏休み、ほとんどの生徒が帰省して、がらんとした修道院で殺人事件があった。
院内の湖に面して建つ尼僧の塔から、生徒の一人太田美知子が墜落死したのだ。美知子の体には多くの刺し傷があり、誰かに尼僧の塔に追いつめられて、塔の最上階の部屋から飛び降りたか突き落とされたと考えられた。
塔の最上階の室内には争った形跡があったが、部屋は内から太い閂がかけられた密室状態であった。

太田美知子の死は警察によって自殺の線で処理されようとしていた、翌昭和44年の春、今度は修道院を訪れたトーマス・グロア司教が、郊外の桜の木に全裸で逆さ吊りにされるという猟奇事件が起きた。
しかもグロア司教の首は切断され、犯人によって持ち去られていた。この事件の犯人として聖アウスラ修道院の用務員梶本健造が捕まった。
逆さに吊ったザイルが健造のものであったことや、現場近くで健造の軽トラックが目撃され、軽トラックの荷台からグロア司教の血液反応が出たことによるものだったが、証拠不十分で釈放された。
事件はこれで終わらず、次に女生徒の一人が修道院の近くの古井戸から半ば白骨化した死体で見つかった。この生徒は素行不良で退学となり、故郷の大阪に行ったが、再び修道院に戻って来る途中で古井戸に落ち、そのまま発見されずに死んだものと思われた。

相次ぐ事件に修道院の評判は悪くなる一方で、院長のマザー・プリシラは二階堂蘭子に事件の解明を依頼した。蘭子は黎人とともに修道院に乗り込むが、再び尼僧の塔から修道女長シスター・フランチェスコが全身を炎に包まれて墜落死するという凄惨な殺人事件が起きた。
しかも塔の部屋は今回も中から閂が掛かった密室であった。閉ざされた世界で蘭子は名探偵として事件をどう解決するのか…
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