吸血の家

江戸時代、宿場町の八王子の遊郭であった久月楼で、取り潰された旗本の姫から女郎になった翡翠姫が座敷牢に閉じ込められ、姫は久月楼の人間たちを怨み、呪って死んでいった。
その後久月楼は遊郭を廃業し、戦争前には郊外に移って料亭を営んだ。もともと遊郭としても老舗であり、料亭になっても格式高く、繁盛した。
戦時中、その久月で殺人事件があった。久月を訪ねて来た脱走兵の井原一郎が、雪の中で倒れ死んでいた。周囲の雪には一郎の足跡と発見者の足跡しかなかった。
一郎は久月の当主雅宮清乃の長女絃子の恋人であり、清乃により仲を裂かれていたが、何らかの理由で絃子のもとを訪ねて来たと考えられた。
一郎の首筋には毒を塗った翡翠姫の呪いの短剣が深々と突き刺さっていた。三多摩署に勤務していた中村警部が捜査にあたったが、犯人も足跡の謎も解明できなかった。

時は移って昭和44年。その久月で再び殺人事件が起こる。絃子の長女冬子の霊を払うために久月では浄霊会が行なわれることになった。
そのために怪しげな霊能力者大権寺瑛華とその夫瀧川義明が呼ばれた。瀧川は絃子の妹琴子の前夫であり、音楽家でもあった。
その瀧川が今度の事件の被害者だった。瀧川は密室状態の部屋の中で日本刀で刺されて殺されていた。瀧川の死んだ時刻にはその部屋の2箇所の出入口はいずれも南京錠で施錠され、それぞれ一つづつしかない南京錠の鍵は厳重に保管されていた。
被害者が殺されたのは室内に間違いないのだが、被害者は密室に入れず、犯人は密室から出れない二重の密室であった。さらにその翌日、大権寺瑛華が雨上がりでぬかるんだテニスコートで短剣を首に刺されて死んでいるのが見つかった。
テニスコートの現場には被害者大権寺瑛華と発見者の足跡しかなく、戦時中の一郎の事件と全く同じ状況だった。
久月の雅宮家の親戚である二階堂蘭子と二階堂黎人は久月の浄霊会に呼ばれ、連続殺人事件に遭遇する。
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