消失!

伝統的に赤毛の血筋が多いという奇妙な街である高塔市は、凶悪な犯罪が多いことでも有名であった。その高塔市で美しい赤毛の持主ばかりを襲う事件が連続して起きた。
最初に襲われたのは30代の主婦で、土曜の朝買物に行く途中、人気のない路地で突き飛ばされたうえ後頭部を一撃されて、財布とネックレスを奪われた。
次に襲われたのは学校帰りの中学生で、公園で覆面の男に突然抱きすくめられて公衆便所に連れ込まれ、中学生が騒ぐと首を絞めて便所の窓から逃走した。
最初の事件の主婦は全治4ヶ月の重傷、中学生は昏睡状態が一週間続いた後で、奇跡的に息を吹き返した。だが、その次の事件でついに命は失われた。
三番目の事件が起きたのは4階建ての雑居ビルの3階だった。各階2部屋づつあるこのビルの3階は、何故か2室とも空き室だった。そのためビルのオーナーの好意でZERO‐ZEROというバンドが10日に一度練習場所として1室を借りていた。
その練習場所にごく最近遊びに来るようになったマリーが殺されたのだ。マリーは見事な赤毛であったが、練習場所ではない方の部屋で金槌で頭を殴られて死んだ。
ところがこの部屋のドアは、マリーが入ってから常時誰かの監視下にあり、他に唯一の出入口である窓は内側から錠が掛っていた。空き室であるために部屋の中には何もなく、マリーを殺した人物が隠れる場所もない。
マリーの死体は、いつも同じ時間に遊びに来るマリーが来ないことを不審に思ったバンドのメンバーが、空き室のドアを開いて発見した。
それを見たメンバーの一人ユカが気絶して床で頭を打ち救急車で運ばれる騒ぎになった。ユカを救急車に乗せたあと、再びメンバーが部屋に戻ると今度はマリーの死体が消えていた。犯人と死体のダブル消失事件が起きたのだ。

マリーの事件に続いて起きたのは祐二殺し。夕方になっても帰ってこない祐二を捜して街中を歩いていた同道堂裕子は、夕暮れの空地から飛び出してきた黒ずくめの男に驚いた。
ふと男が出てきた空地を見ると、そこには祐二が死体となって横たわっているではないか。愕然とした裕子だったが我に返ると、逃げる黒ずくめの男を猛然と追い始めた。最愛の祐二を殺した男を絶対に許せなかったのだ。
もの凄い形相で追ってくる裕子から黒ずくめの男は必死で逃げ、小学校の裏の路地に入った。ところがその路地は学校の通用門と駐車場で行き止まりだった。
裕子は男を追い詰めたはずだったが、その路地を入ってみると男の姿は消えていた。学校の塀は高くよじ登れないし、通用門は南京錠がついていて開扉不能、駐車場には車が一台しかなくその中にもいなった。
狐につままれたような裕子は仕方なく祐二の死体のある空地に戻ったが、そこには祐二の死体もなかった。またしても犯人も死体も消えたのだった。
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