θは遊んでくれたよ

最初の死者は、早川聡史というフリーターだった。数か月前に引っ越したマンションの8階にある自室のベランダからの飛び降りだったが、奇妙な事実が2つあった。一つはベランダに延長コードを途中で切断し、導線をむき出しにした電気コードがあったことで、当然ながらこのコードに触れれば感電する危険な状態だった。
そしてもう一つは早川の死体の額に、赤い口紅でギリシャ文字のθが書かれていたことだった。はたして早川の死は自殺なのか、それとも他殺なのか、自殺とすればその原因は何なのかということだろう。
半月程のち、木村ちあきという看護師が、自分の勤務している病院の屋上から飛び降りた形で死んだ。司法解剖の際に、ちあきの右手の手のひらにはθが赤い口紅で書かれているのか見つかった。当然、警察もθに着目してその方面の捜査もしたが、現場の状況からは事件性を思わせるものは他に発見されず、警察の見解は自殺と判断された。
それから1ヶ月後、今度は建設中の建物から飛び降りたとみられる死体が見つかった。死体の主は高島健之といい、その建物の建設現場で働いていた。そして検死のときに高島の靴下を脱がせてみると、その足の裏にはやはり赤い口紅で書かれたθがあった。
自殺にしても、θの意味するものは何なのだろうか。そしてそのθに意味があるとして、自分で書いたものだろうか。怪しげな結社か宗教団体でも裏で暗躍しているのだろうか…
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