有限と微小のパン

西之園萌絵は同じ大学の友人牧野洋子と反町愛の3人で長崎にあるテーマパークにやってきた。そこはナノクラフトというコンピューター・ソフト会社が経営し、ヨーロッパの街並みを再現した施設でユーロパークと呼ばれていた。
ナノクラフトの本社もテーマパークに隣接しており、さらにナノクラフトの研究所は公にはなっていないが、ユーロパークの地下にあった。
ナノクラフトは塙理生哉という一人の天才プログラマーが高校生の時に立ち上げた会社で、その後あれよあれよという間に急成長し、10年後の今では世界的な会社になっていた。
最近ではナノクラフトが開発し発売したRPGクライテリオンが話題になっていた。クライテリオンはクリアするのは大して難しくないが、エンディングに謎の場面がることが、さらにユーザの興味を煽っていた。
何かと話題のナノクラフトだったが、塙理生哉と西之園萌絵は知合いであった。知合いといっても年齢も違うし、会ったことも数度、それも萌絵が子供の頃の話だった。
理生哉と萌絵の親同士が友人で、将来は2人を結婚させようとかいう約束をしたとかしないとか…という、2人にとって言われても困るような話がそもそもであった。
したがって萌絵も意識をするような知合いではなかったのだが、萌絵はナノクラフトの大株主でもあり、理生哉からユーロパークへの招待を受けたのだった。
この機会に萌絵は大学のゼミ旅行をユーロパークで行うことを提案し、クリスマスをユーロパークで行うことにした。その先乗りで萌絵たち3人が長崎に来たという訳だった。

そのユーロパークでは従業員の一人が死体を見つけ通報したが、警察が駆けつけてみると死体が消えていたという不思議な事件が噂になっていた。
事件があったのか、なかったのか、まったく謎のままだったが、萌絵たちがやって来るとそれを待っていたかのように事件が起きた。
園内の一般人立入禁止の教会内でナノクラフトの従業員が殺されたが、その死体が腕一本を残して消失したり、密室となったホテルの部屋で同じくナノクラフトの職員が殺されたりした。
一方、萌絵は半ば理生哉に拉致されるようにナノクラフトの地下研究所に連れ込まれ、そこで薬で眠らされた挙句、「すべてはFになる」事件での宿敵真賀田四季博士に会う。
天才プログラマであり、「すべてはFになる」事件で行方がわからなくなっていた真賀田四季はナノクラフトを事実上支配していたのだった。萌絵はやがて解放されたものの、地下研究所への入口もその痕跡もまったく跡形もなく消されてしまっていた。
一方、そのころ東京の学会から那古野に戻る途中の萌絵の指導教官犀川助教授は、新幹線の中で真賀田四季からの電話を受ける。
不穏の気配を強く感じた犀川助教授は急遽ユーロパークに向い、また「すべてはFになる」事件で捜査を担当していた芝池刑事が担当刑事としてユーロパークに乗り込んできた。
芝池刑事はもともと愛知県警の刑事で、萌絵や犀川とも顔見知りだったが、家庭の事情で長崎県警に移っていたのだった。
やがて犀川もユーロパークで萌絵たちに合流したが、それを待ち構えていた真賀田四季は…

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