人形式モナリザ

白樺湖近くのペンションでアルバイトを始めた小鳥遊練無のところへ、無線宿泊が目的でやって来た瀬在丸紅子や保呂草潤平、香具山紫子の一行は、近くの人形博物館で起きた殺人事件に巻き込まれる。
人形博物館は乙女文楽というこの地に伝わる女性が一人で人形を操る珍しい文楽の実演を毎日行っていた。
一部は女性2人による2体の人形を使った文楽芝居。そこで一端幕が閉まり2部は乙女文楽の師匠を中心とする公演だった。殺人事件は2部で起きた。
乙女文楽の師の岩崎雅代は舞台上にある櫓の上から糸で舞台上にいる人間を操るのだった。実際は舞台上の人間は操られるわけではないのだが、そこは人形に見立てての演技となる。つまりは2人の人間による見立て文楽だった。
人形役をするのは雅代の孫の嫁の麻里亜であった。そして雅代は高齢のために車椅子での生活で、櫓の上には専用の簡易エレヴェーターで上がっていた。
いつものように公演が始り暫くして舞台上の麻里亜が突然倒れ、観客やスタッフが駆け寄った。観客の中には紅子の一行や偶然休暇で来ていた愛知県警の林刑事や祖父江刑事がいた。林刑事は紅子の離婚した前夫、祖父江刑事はその現在の愛人だった。

いち早く麻里亜のもとに駆け寄った林や紅子は麻里亜が毒で倒れたことをさとる。すぐに救急車が手配され、緊急処置が出されて館内は封鎖された。
その直後、いつまでたっても降りてこない櫓の上の雅代の様子を見に行った紫子は、そこで雅代が背中をナイフで刺されて絶命しているのを知る。
病院に運ばれた麻里亜は幸い命は取り留めたが、その後の調べで公演の直前に楽屋で飲んだ湯のみ茶碗に毒が入っていたことがわかった。毒が入っていたのは麻里亜の湯のみ茶碗だけだった。
そして毒を飲んだ麻里亜が舞台で倒れ舞台が人でごった返しているときに、犯人は舞台の隅にある櫓に上って雅代を刺し殺したのだ。
しかもエレヴェーターは舞台上に降りていたから、犯人は雅代を刺した後にエレヴェーターを使って舞台に下りたか、まったく使わなかったのだ。
ちなみに櫓の上には人が隠れるようなスペースはまったくなかった。犯人はなぜこんな環境で殺人を犯したののか、まったく理解に苦しむ選択としかいいようがなかった。
この不可解な事件を調べていくと、その背景に有名な彫刻家江尻駿火の存在が浮かび上がる。駿火は5年前に死去していたが、晩年はモナリザを模したといわれる泥人形作りに熱中して多くの人形を作り、その数は約千体にも及んだ。
最後にやっとモナリザが出来たと言って、その直後に死んだのだが、千体の人形のうちどれがモナリザなのかはいまだに特定できなかった。
いま、その千体の人形は駿火の親戚である岩崎家に保管されており、犯人はそれを狙ったのではないかと考えられたのだった。
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