封印再度

岐阜県にある旧家香山家。そこでは50年ほど前に、仏画家の当主香山風采が謎の死を遂げていた。風采が死んでいたのは仕事場として使っていた蔵で、死体発見時は周囲に雪が積もっていて足跡はなく、密室状態の中でナイフのような鋭利な刃物で胸を刺されて死んでいた。
しかし凶器は室内のどこを捜してもなかった。その代わり「天地の瓢」といわれる壺と「無我の匣」という銀の鍵箱が残されていた。警察の捜査で風采の死は自殺とされたが、壺と鍵箱は家宝として新たに香山家の当主となった林水に引き継がれた。
「天地の瓢」の中には銀色の鍵が入っているが、それは壺の口からは取り出すことが出来ず、取り出すためには壺を割るしかないが、それは遺言で許されていなかった。
「無我の匣」を開くための鍵は、「天地の瓢」の中にある鍵が必要だった。つまり「天地の瓢」から鍵を何とかして取り出さない限り、「無我の匣」は開けないのである。
X線で検査したこともあったらしいが、「天地の瓢」の中には確かに鍵が入っており、一方「無我の匣」の中には何も入っていないらしかった。
その後50年「天地の瓢」も「無我の匣」も謎を解かれることなく香山家に伝えられていた。

N大学建築学科の西之園萌絵は、「天地の瓢」も「無我の匣」の話を聞いてさっそく興味を示して香山家で実物を見てくる。そのパズルの謎も大いに魅力的だったが、50年前の風采の死が他殺だとすれば、密室殺人でありそれも非常に興味深かった。
それから暫くして香山家の当主林水が風采同様謎の死を遂げた。状況は風采のときとほとんど同じで、仕事場にしていた蔵の中に大量の血を残して林水が消えてしまった。
しかも蔵の扉は外からは開かず、中から閂がかけられていたようだ。林水の死体は香山家から少し離れたところを流れる川の河原で見つかった。
そして蔵の中には「天地の瓢」と「無我の匣」が置かれており、「天地の瓢」には林水の血がついていた。林水の死因は胸をナイフ様のもので刺されたことだが、そのナイフはどこからも見つからなかった。
50年前の風采の死が密室殺人ならば、今回の林水の死は密室からの脱出だった。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -