冷たい密室と博士たち

N大学工学部土木工学科極地環境研究センター、通称極地研は4年ほど前にキャンパスから10キロほど山中に入った新しい施設に移っていた。
そこでは木熊教授が率いる喜多助教授、市の瀬助手らの講座が、実権施設を使って極地環境研究を行っていた。
N大学建築学科の犀川助教授とそこの学生西之園萌絵は、ある夏の夜に極地研の実験の見学に行った。喜多助教授と犀川助教授が親しく、実験の様子を犀川が見たがったのだ。
実験が終わり極地研の実験室の中で打ち上げが行われたが、2人の学生丹羽健二郎と服部珠子の姿が見えなかった。2人が実験に参加していたのは間違いなく、最初のうちはどこかに行ったのだろうと皆考えていた。
2人とも実験中に来ていた頭の天辺から足先までを覆う、防寒スーツを脱ぐために実験室を出てから、2人の姿を見かけたものがいないことがわかると、さすがに皆おかしいと騒ぎ始めた。
実験施設内の捜索が始まり、やがて実験室に隣接する準備室で丹羽の死体が、さらにそこに隣り合った機材の搬入室内で服部の死体が続けて見つかった。2人ともナイフで刺殺され、他殺と断定された。

実験室の隣にある準備室には実験室と外部、それに搬入室の三方にドアがあった。しかし外部へのドアは中からしか開けられず、しかも中から鍵が掛かっていた。
実験室では打ち上げが行われていて誰も出入りしなかったことは明らか。すると犯人は搬入室から出入りしたとしか考えられなかった。
ところが搬入室は準備室との間のドアのほかには、外部からの機材の搬出入の為に外部へのシャッターがあるだけであった。しかもこの時シャッターは故障していて、開くことができない状態であった。
現場は犯人も被害者も出入りできない密室であった。犀川も萌絵も事件を考えたが、まったく解決がつかない。そんなおり極地研のほかの部屋から白骨化した死体が見つかった。
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