すべてがFになる

三河湾に浮ぶ妃真加島(ひまかじま)にある真賀田研究所。そこを実質的に支配するのは、天才プログラマ真賀田四季博士であった。
四季は9歳でプリンストン大学のマスターを授与され、11歳でMITの博士号を取得した天才であったが、14歳の時に両親を刺殺した。
心神喪失状態にあったと認められ四季は裁判で無罪となったが、それと同時に妃真加島に設立された研究所の中に、閉じ込められて生活するようになった。
以来15年間、四季は研究所の自室から一歩出ずに生活していた。四季と50名いる所員とのコンタクトも全てコンピューターを介して行われていた。
四季の部屋は二重の扉で外界と遮断されていた。外側の廊下に面した黄色く塗られた扉は外からしか開かなかった。つまり、中にいる四季には開けられなかったのだ。その先にあるアルミのドアは内外両側から開けられた。
四季の部屋には何人も立入りが禁止されていて、荷物の搬入などは外の扉を一旦開けて中にいれ、殺菌を行ってからアルミドアを開けて四季の部屋に入れていたのだ。
ここ数年で四季の部屋に入ったのは、四季がダイエットによる体調不良で点滴を受ける為に看護婦が入ったのとテレビの修理に来た若者が入っただけであった。

真賀田研究所自体も変っていた。建物に窓は一切なく所員は全員自室を持ち、自分の部屋で生活していた。日常のコミュニケーションは全てコンピューターを介して行われるのが常であった。
妃真加島自体も今は真賀田家の私有地であり、本土との間には定期の交通機関はなかった。妃真加島の先の篠島に行く船が寄って行ってくれるか、真賀田研究所の所長で四季の叔父の新藤清二が所有するヘリコプターだけが外界との交通で、そのほか外界との連絡は電話か電子メールで行われていた。

その妃真加島にコネを使ってキャンプに行った、N大学工学部の犀川助教授一行。犀川の講座の学生西之園萌絵のコネであった。
島に入った最初の夜、犀川と萌絵は研究所を訪ね中に入れてもらう。そのとき研究所のシステムのエラーが発生し、四季の部屋で異常が起きた。
誰も命じていないのに四季の部屋の扉が開き、中から荷物運搬用のカートロボットに乗せられた四季の死体が出てきたのだ。四季の死体はウェディングドレスを着ていて、そのドレスの下の死体からは両手両足が切断されていた。
この研究所全体をコントロールするRed Magicは、四季が7年前に作ったものでセキュリティーは万全。従って四季の部屋のロックも完全であり、四季の部屋は完璧な密室であった。
四季の死体が部屋から出てきたあと、すぐにドアは閉じられ密室状態は保たれた。第一ドアの出入りは全てビデオに撮られていて、後から見ても四季の死体が出てきただけで、ほかには何人も出入りしていなかった。
その後、四季の部屋は徹底的に調べられたが誰も隠れてはおらず、四季は自身が作った完璧な密室の中で何者かに殺されてしまったのだった。
そして四季の部屋のディスプレイ画面には「すべてがFになる」という謎の言葉が残されていた。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -