凶鳥の如き忌むもの

怪異譚を求めて谷間の山村から盆地の農村、沿岸部の漁村まで日本全国を訪ねて廻る小説家の刀城言耶は、瀬戸内海の孤島鳥坏島の鵺敷神社に秘儀があると聞き取材に行った。
鳥坏島は現在は無人島で、鵺敷神社も普段は無人であった。鵺敷神社は巫女が守り、当代の巫女は鵺敷朱音といった。朱音は本土の潮鳥町に住んでいたが、18年ぶりに秘儀である鳥人の儀を行うことになり、すでに島に渡っていた。
鳥人の儀は特別な年の盆に行われ、秘儀が成功すればよいが、失敗すれば巫女の命はなかった。三代目の朱慧は秘儀に失敗して死亡していた。
さらに先代の朱名は18年前、戦争中に秘儀を行ったが、そのときは調査の為に同行した城南民俗研究所の6人の人間が朱名とともに島から消えてしまった。
18年前の秘儀のときは8歳であった朱音も母の朱名に同行して島に渡ったが、朱音一人だけが助かったのだ。朱音は外側から閂をかけられた物置に閉じ込められていて、そこを助け出されたのだ。
朱音によれば儀式をやっていた神社の本殿で叫び声が聞こえ、その直後に研究所の学生に抱きかかえられて物置に閉じ込められたのだという。
結局18年前の秘儀では朱名も研究所の面々も行方不明のままとなったが、戦争中だったこともあり事件は伏せられた。

18年ぶりの秘儀は朱音によって行われる。潮鳥町の4人の青年が立会い、ほかに刀城と女子大生の北代瑞子の2人の部外者が島に渡ることを許された。
神社の本殿で鳥人の儀が行われるのだが、万一を考えて立会いの青年にひとりで朱音の弟の鵺敷正声の発案で、本殿とその外を連絡する鈴がつけられた。
やがて時刻になり本殿には朱音が一人で入り内側から閂を掛けた。本殿からは長い廊下が伸びておりその先にもうひとつ扉があり、その扉は外側から閂が掛けられた。
そして扉の外、閂の前に刀城言耶と正声が念のために控えていた。そして本殿の中からは適宜儀式の合間を縫って朱音が紐を引いて鈴を鳴らして合図をした。
数分おきに鳴る鈴に刀城たちは安心していたが、やがてめちゃくちゃな鳴り方をしだし、ついに刀城と正声が本殿に向かった。本殿は中から閂がかけられており外からは開けられない。
斧で扉に穴をあけ、そこから手を入れて閂を外して本殿に突入したが、そこからは朱音の姿は掻き消えていた。
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