京都府中部の山中にあるファイアフライ館は、世界的なヴァイオリニスト加賀蛍司が建てたものだった。作曲もする加賀は、自身が静かに曲の想を練るためと、自身がリーダーを務めるヴァレンタイン八重奏団の練習を目的に、この館を建てたのだ。
そして場所の選定には館名にもなった蛍が大きくかかわっていた。加賀は蛍に異常な執念を燃やしており、館内に世界中の蛍の標本をコレクションした専用室を設けていた。館は蛍の飛び交う清流と森林の中にあったのだ。
その館で惨劇が起きたのは10年ほど前だった。館内で合宿をしていたヴァレンタイン八重奏団の面々が、加賀に次々に襲われ命を落としたのだ。加賀を含めて8人のメンバーのうち6名が加賀に刺殺され、小松響子という女性ヴァイオリニストは行方不明になった。
加賀は逮捕されたが、「蛍が止まらない」という謎の言葉をつぶやき、3日後に病院で衰弱死してしまった。館は朽ち果てていくばかりだったが、青年実業家でF大学OBの佐世保左内に買い取られた。
佐世保は館に手をいれ、加賀が拠点にしていたころとそっくりな状態に装飾した。そしてF大学アキリーズ・クラブの合宿に利用した。アキリーズ・クラブは廃墟や幽霊屋敷、心霊スポットなどを主に探検する肝試しクラブで、佐世保はそのクラブのOBでもあったのだ。
佐世保が館を購入したのも、実際の惨劇のあった館で肝試しをするのが、目的の一つで、昨年第1回の合宿が行われた。そして今年が第2回目だったが、天候は梅雨前線の影響で大雨。悪天候を冒して、佐世保のほかに現役の部員6名が館にそろったが…
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -