凄惨な事件のあった和音島から戻った烏有は、階段から転落してしまった。そのときに記憶障害を起こし、和音島の事件に関する記憶がまったく消失してしまった。
しかし、それに関連することを除けば日常生活には大きな支障はなく、和音島に向かう前にアルバイトをしていた職場である、雑誌の編集部に復帰した。
最初に取材に向かったのは巫女神というリテラアートの専門家であった。リテラアート、それは巫女神が創設したもので、80年代にアメリカで発表されたオペラアートを発展させたものだった。
簡単にいえばオペラアートは声楽と器楽の融合であり、リテラアートは言葉と絵画の融合であった。まだ概念は未確立だが、絵と言葉が一枚のパノラマとして描かれていた。
しかし、その絵はある意味で不気味であり、烏有にはほとんど理解できなかった。もうひとつ、烏有には巫女神のところである出会いがあった。巫女神の手伝いをしているわぴ子という女性に興味を抱いたのだ。
わぴ子の方も巫女神に興味を持ったらしかった。烏有はその後、暫くして正社員に採用され、同じ雑誌の編集部に勤務することになった。一方、烏有には別の烏有が宿ったようであった。
ある夜、気がつけば神社の境内で灯油のポリ容器を持って立っていたのだ。すぐに神社の社殿が燃え始めた。あきらかに烏有が放火したのだった。
烏有はすぐに自転車で逃げたのだが、神社まで自転車で来たことすら記憶がなかった。いったい自分に何が起きたのだろう。新聞報道では神社は放火されただけでなく、社殿の焼跡の中から死体が見つかった。
しかも、その死体は焼死体ではなく、放火される前に殺されたものだった。烏有は放火だけでなく殺人まで犯したのだろうか…

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