夏と冬の奏鳴曲

日本海に浮かぶ孤島和音島は、20年前にアイドル女優真宮和音が死んだ島だった。島の所有者は老いたライオンと言われる大実業家の水鏡三摩地で、三摩地はまた和音のパトロンでもあった。
当時島には三摩地と和音とともに、和音を慕う5人の男女が共同生活をしていた。武藤紀之とその妹尚美、村沢孝久、結城孟それに小柳といういずれも20歳前後の若者だった。
和音は映画「夏と冬の奏鳴曲」で主演したが、その映画自体は一週間、それも全国で唯一館でしか公開されず、公開当時はたいした評判にもならなかったが、熱烈な和音ファンをうみ、その中で特に狂信的なのが和音島に渡った5人であった。
ところが島で共同生活が始って間もなく、和音が島の居館和音館に作られた円形舞台から海に飛び込んで死んでしまう。そして、それを追うように武藤が自殺した。
主を失い、武藤が死んで4人となった若者は島を去った。その後尚美は村沢と結婚し、小柳はカトリックに帰依し神父となってパトリク神父と呼ばれるようになった。水鏡三摩地は島に一人残った。

和音が死んでから20年後、水鏡三摩地の発案で村沢夫妻、結城孟、パトリク神父の4人は和音を偲んで同窓会を開くために島に渡ることになった。
島で5人が5日間ほど共同で生活し、亡き和音の思い出に耽り、幻の映画「夏と冬の奏鳴曲」も上映されるという。この同窓会の模様を取材することになった京都の出版社の記者如月烏有とアシスタントの女子高生舞奈桐璃は4人の男女と一緒に和音島に渡る。
島に着くと島まで送り届けてくれた船は引き返し、5日後に迎えにくるという。島の周囲は見渡す限りの海原で、和音島はまさに絶海の孤島だった。
そして和音館はピカソの絵に代表されるキュビズムにより作られていたから、歪んだとしか形容しようがない洋館だった。ただし電気は自家発電、電話も無線で通じ、テレビも見れるから普段と同じ生活はできる。
やがて晩餐の席。時間に少し送れてきたフォーマルな服に着替えた桐璃を見て人々は驚いた。和音館の歪んだ階段の踊場に架けられた和音の肖像画に桐璃のドレス姿がソックリだったのだ。
烏有も後で見て呆然としたほどだから、和音の熱狂的信者の5人が驚くのは当然であった。しかし、その事実は桐璃は知らない。桐璃が肖像画を見る前に、誰かが肖像画の顔の部分をX字型にナイフで切り裂いたからだった。
そして、それに続いて惨劇が起きた。翌朝、水鏡三摩地の死体が円形舞台の前で発見されたのだった。その日は夏だというのに異常気象で雪が降り、庭一面が銀世界であった。
その雪を紅に染めて三摩地の死体が横たわっていた。しかも死体には首がなく、周囲の雪には足跡は一つもなかった。電話は通じず、おそらく犯人によって破壊されたと思われた。
夏の夜の雪の密室殺人は絶海の孤島に閉じ込められた人々のあいだに疑心悪鬼を招くが…

問題作との評価がある作品で、訳ありげな20年目の再会、孤島、足跡のない殺人とガチガチの本格志向。しかも大作で文庫版で700ページを超えるが、すっきりしない読後感。
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