翼ある闇

メルカトル鮎最後の事件と副題がつくように、シルクハットに黒マント、人を人とも思わぬ探偵メルカトル鮎の最後の事件。

京都北郊の非常に不便な山中に建つ今鏡家の館蒼鴉城(そうあじょう)に、有名な探偵木更津悠也と私香月実朝が訪れたときには、今鏡伊都と今鏡有馬がすでに死体となっていて、警察も来ていた。
木更津が私を誘って蒼鴉城に来たのは、今鏡伊都からの依頼状が、その直後には蒼鴉城には近づくなと記された脅迫状が届いたからだった。
木更津は有能な探偵だが、食指を動かすのは好みの事件だけで、まさに今回のような脅迫状が突然やってくるような事件が好みであった。
だが犯人は木更津が来る前に既に行動を起こしていたのだった。しかも2件の殺人は首切りという猟奇的なものであった。蒼鴉城のギロチンだけが鎮座する地獄の門という部屋に有馬の胴体と伊都の首が、有馬の部屋には伊都の胴体が、そして有馬の首はホールの帽子掛けに架けられていた。
地獄の門の死体の手には地獄の門の部屋の鍵が握られ、その死体の周囲にはオレンジの種がまかれていた。部屋の鍵は内側からかけられ、合鍵は家政婦のところに保管されていて、それは埃にまみれて使われた形跡はなかったという。つまり、伊都の首と有馬の胴体は密室の中にあったのだった。

この事件を皮切りに蒼鴉城では次々と今鏡家の人間を狙った殺人事件が起きた。それも全て首と胴体を切り離されるという猟奇的な殺され方であった。
木更津は解決に失敗し、山に籠るべく蒼鴉城を去った。その木更津と入れ違うように大阪からシルクハットに黒マントといういでたちの名探偵メルカトル鮎がやってきた。しかしメルカトルのことをあざ笑うかのように殺人は続いた…
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -