しゃべくり探偵

ボケ・ホームズの保住とツッコミ・ワトスンの和戸の掛け合いによる連作ミステリ。番犬騒動は2人の会話のみ、洋書騒動は書簡、煙草騒動は電話のやり取りのみで書かれ、最後の分身騒動は福数人の会話体で大団円となる。
番犬騒動
大学生の和戸は、毎日シェパードを朝と夕方の2回、淀川岸の公園に散歩に連れていくというアルバイトを3週間やって50万円近い収入を得た。大学の体育の教授から紹介されたアルバイトで、アルバイト先は成金の屋敷。
そこに住むのは主人と奥さんとクラブ活動に明け暮れる高校生の息子であったが、シェパードはなぜか冷遇されているらしく犬小屋は庭の隅にポツンと置かれており、シェパードの家族にはなついていないようだった。
散歩は必ず時間と場所が指定され、2時間ほど淀川岸の公園と決められていた。そこは市民がマラソンしたり散歩したりと憩いの場であったが、和戸は数日するといつも同じ男がいることに気づいた。
その男はラフな格好をして目立たぬようにしていたが、首から下げたネックレスの金の鎖が目立っていた。そしていつも服に隠れたネックレスの先端を大事そうに押さえていた。
散歩のアルバイト中に気づいた不審なことといえばその程度で、アルバイトも無事に終えて和戸は50万円を手にした。だが成金とはいえなぜあんなに高額のアルバイト料を払ってまでシェパードを散歩させたのだろうか…

洋書騒動
ゼミの研修旅行でロンドンに行った和戸たちの間で書籍騒動が起きた。和戸を含む6人が教授に紹介されたロンドンの書店に行った。そこで買い物をしたのは2人だけ。
金持ちのキザで皆から嫌われている日渡と貧乏学生の清沢だった。2人はともに古書を5~6冊買ったが、特に高かったのが日渡の買った「チャールズ・ディケンズ考」の一冊。
金にあかせて買う行動に、本当の本好きの清沢が嫌悪の表情を示した。もともと日渡と清沢はライバル関係にあって仲が良くないのだ。
日渡は本を買ったあともカバーの上からいとおしそうに撫でたりして、清沢の心を刺激した。本は夕食の席で皆の間に回されてきたが、和戸など英語はよくわからないし、すぐに隣に廻してしまったほどだ。
そして本は電子ロック付きの日渡のスーツケースに入れられた。翌日、教授が日渡の買った「チャールズ・ディケンズ考」を見たいと言いだしたが、開けられたスーツケースの中からは「チャールズ・ディケンズ考」が消え失せていた。日渡は清沢が犯人に違いないと糾弾するのだが…

煙草騒動
ロンドンの留学生会館で和戸たちのお別れ親睦パーティが開かれた。そのパーティの最中に、留学生会館に勤める安土良愛が通信室で殺された。
通信室はファックスやテレックス、パソコンなどがおかれた部屋で、もっぱら安土良が通信関係の事務をしていた。部屋には鍵がかかっておらず、上げ下げ式の窓は開いていた。
その窓からは人間一人が出入りするのがやっとだが、窓外の花壇には足跡はおろか一切の跡がついていなかった。被害者の安土良は背中を2ヶ所ナイフで刺されていたが、凶器は現場になかった。
被害者の手には煙草が握られており、死体の側にはライターが落ちていた。その煙草とライターは和戸たち一行の高田のもので、高田は数日前に安土良に言い寄って振られたとの証言もあり、警察は高田を連行してしまった。

分身騒動
ロンドンから帰ってきた和戸たちだが、帰る早々メンバーの中に変な騒動が持ち上がった。自分はロンドンにいるはずなのに、周りの人間…それはアパートの隣室の人間だったり、先輩であったりするのだが…が何人も日本国内で姿を目撃したというのだ。中にはドッペルゲンガーだと悩む者も出てきて…
この最後のエピソードで番犬騒動、洋書騒動、煙草騒動が全て収斂されて大団円となる。


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