硝子細工のマトリョーシカ

アイドル歌手小泉つばさが、別荘のガス爆発で死んだ。最初は爆発事故と思われたが、その後の調べで自殺とわかった。ガス自殺を図ったが、プロパンであったために死に切れず、ライトをつけたところガスに引火して爆発したのだった。
死神と名乗る人間がネット上で展開する、「赤裸々日記」と題する悪意を持って書かれた、つばさの日々の行状記に精神的にかなり悩んでいた。これが自殺の原因と考えられた。
アイドルの死に世間は騒然とし、後を追って自殺する若者も多かった。つばさの大ファンであった森本健司もその一人で、つばさの死を聞いた日にマンションの屋上から飛び降り自殺した。
健司の一周忌の翌日、首都13テレビで「マトリューシカ」と題する2時間の生放送テレビドラマが、放映されることになった。「マトリューシカ」はつばさとも仲が良かった、美内歌織が脚本を書き主演を勤めた。
美内歌織は作家であり、また女優でもあった。そして森本健司の兄の晋太郎と結婚することになっていた。

「マトリューシカ」はテレビ草創期に行われていた生放送によるミステリドラマで、歌織によると生でなければ意味がない内容であった。その内容は婚約者の晋太郎にも教えられていなかった。
放送が始まると、晋太郎はビールと枝豆、てんぷらを持ってテレビの前に陣取った。すると電話がかかり、晋太郎に対してすぐに「マトリューシカ」の放送を中止しなければ、歌織を殺し、次に晋太郎を殺すと脅した。
同じ内容の電話はテレビ局にも架かったが、テレビ局も晋太郎も、いたずらとして何も手を打たなかった。やがて「マトリューシカ」の中で、集まった出演者たちが麦茶を飲むシーンがあった。そこで歌織だけが麦茶を飲んで倒れてしまった。
テレビはすぐにCMになったが、この歌織の事件が演技か本当かわからない。たしかに歌織の飲んだ麦茶のカップの中には、精製したニコチンが含めれていた。
幸い応急処置がよかったのか、ほとんど飲まずに口から吐き出したのがよかったのか、歌織は医務室で、少し休んだだけで回復した。
一方その間、番組は歌織なしで何とか進められた。一方テレビを見ていた晋太郎は、婚約者の聞きに慌ててテレビ局に駆けつけてきた…
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -