ウェディング・ドレス

祥子とユウは結婚式を挙げることになった。祥子の母親と父親は祥子が生まれる直前に駆け落ちの約束をしたが、母親は父親に裏切られて、一人で祥子を産み育てた。
だから祥子は父親を知らなかったし、母親も祥子に父親のことは話さなかった。祥子の母親は5年程前に佐竹という男と再婚したが、祥子は佐竹のことを父親とは認められずに2人の住む家を出て一人暮らしを始めた。
1年程前に母親が癌の手術をした。母親は手術の間際に祥子が結婚する時に渡すものがあると祥子を枕もとに呼び寄せて継げた。それは桐のタンスの隠し引出しの中にあるという。母親の手術は成功し佐竹と暮らし続け、一方祥子も一人暮らしに戻った。
ところが母親が夜一人でいるときに強盗が侵入し、母親を絞殺して逃げた。部屋は荒らされていたが盗られたものは何もなく、犯人も捕まらなかった。
そして祥子はユウと知り合い、ユウのプロポーズを受けて結婚することになった。佐竹から桐のタンスの隠し引出しの鍵を貰い受けて開いてみると、そこには純白のウェディングドレスがあった。
やがて式の当日、祥子は結婚式にそのウェディングドレスを着て出席するためにユウと2人で式場の教会に向かった。教会は祥子が子供の頃から何度も出入りし、そこのキング牧師は祥子の父親代わりのような存在だった。
その教会で祥子は最愛のユウと2人だけで式を挙げる予定だった。控え室に入り式の準備を始めるとユウが結婚指輪を部屋に忘れてきたことに気づく。

祥子は指輪なしでもいいと言うが、ユウは大事なアイテムだと譲らずに、牧師のスクーターを借りて部屋に取りに戻った。それが不幸の始まりであった。
なかなか戻ってこないユウにイライラし始めたころ祥子充てに電話が掛ってきた。ユウが踏切で列車に撥ねられて病院に担ぎ込まれたというのだ。
祥子はウェディングドレス姿のまま病院に向かった。途中でユウの会社の人間だという2人組から呼び止められて、車に乗せられる。
その途中で男たちの態度が豹変し、祥子は薬を嗅がされ眠らされてしまう。そして目覚めた祥子はレイプされたのだ。ところがあまり手荒なことはされず、再び眠らされた祥子は現場から逃げ出し病院に駆けつける。そこには変わり果てたユウの姿があった…

この作品は祥子の視点からの描写とユウの視点の描写が交互に綴られ、奇数章は祥子の偶数章はユウの眼から見た世界が書かれている叙述志向の作品で、それが出会ったときにそれまでの謎が解き明かされます。
殺人事件も発生し大掛かりとも言えるトリックも仕掛けられているが、それよりも叙述の妙を味わうべき作品です。
島田荘司と新本格作家のメインページにもどる
Mystery Collection Mainへもどる


Last modified -