日曜の夜は出たくない

倉知淳のデビュー作で、表題作ほか7篇プラス落ち2篇の連作短篇集。猫に似た目つき、雰囲気、動きの猫丸先輩の探偵談。
空中散歩者の最期
ダイワマンションの裏にあった男の死体は、高所からの飛び降りたもので、当初はマンションからの自殺と考えられた。だが解剖所見が出て、死体20m以上の高さから落ちたものとわかると刑事たちは首を捻った。ダイワマンションの高さは屋上のテレビアンテナを含めても10m50。
ほかに近所で高い建物はダイワマンションの向こう側に大通りを挟んで建つ釜谷第三ビルだが、これとて15m50。いったい男はどこから飛び降りたのか?それとも空から降ってきたのか?そういえば死体の側には烏の死骸が一羽、まるで男とぶつかったようにして落ちていたが…

約束
六角公園と通称される区立公園のベンチで、鍵っ子の麻由とおじちゃんは知り合いになる。母親が働いていて、7時まで家には誰もいない麻由にとって、おじちゃんと話をするのは楽しいひと時であった。
麻由とおじちゃんが知り合って2週間ほどたった日に、おじちゃんは麻由に告白をする。おじちゃんは汚職をしていたが、「麻由ちゃんと毎日話をして警察に行くことにした」と言うのだ。
麻由はおじちゃんと会えなくなるのは淋しかったが、明日もう1回だけ会ってくれ、その後で警察に行ってくれと頼み込み、おじちゃんも約束してくれた。
だが、その夜おじちゃんは六角公園のベンチで睡眠薬とウィスキーを飲んで凍死してしまった。何でおじちゃんは約束を破ったのか…

海に棲む河童
昔々、徳川様の時代に山の者と海の者は物々交換のために、お互いの村を行き来していた。初めて海の村に来た、山の住人太吉と茂平は海の広さに驚き、小船を失敬して漕ぎ出したが荒波にあって船は転覆して小島に流れ着く。
すると怪物が現れ太吉と茂平に相撲を取れという。勝った方を村に戻し、負けた方を殺すと言う。太吉と茂平は相撲を取り、太吉がわざと負けて殺され、その様子を見た茂平は気を失った。
茂平が気づくと海の村に戻されていて、やがて切り裂かれた太吉の水死体があがった。
変って現代。伊豆の海にやって来た2人の学生。水着姿の女性を期待してきたのだが、天気が悪くているのは2人だけ。遊覧目的で猫丸に誘われて海に出たのはいいが、猫丸の操る船は荒波を受けて転覆し、3人は沖合いの小島に流されてしまう…

一六三人の目撃者
小劇場でロシア革命を扱った舞台が掛けられていた。出演者は7名いうこじんまりした舞台であったが、客席には定員を越える163名の観客がいた。
終幕近く舞台上では主演女優が主演男優のグラスに酒を注ぎ、男優はそれを飲み干した。その直後に男優は苦しみだし、そのまま事切れた。
舞台監督始めスタッフや出演者の好判断で観客は事件と気づかず劇場を後にしたし、舞台上の現場に近づいた者はなく現場保存は完璧に成された。
その後、小道具の酒は本物で中にはニコチンが混入されていたことがわかった。上演直前には酒壜には毒は入っていなかったのは証明され、上演中に酒壜に触れたのは主演女優だけ。だが、観客席には163名の目撃者がいた…

寄生虫館の殺人
しがないライター壇原邦宏は強引に依頼された寄生虫博物館の紹介記事を急ぎ書くために、夏の暑いさなか目白にある寄生虫博物館に取材に行く。
ものがものだけに見学者は一人もなかったが、1階受付にいた三国礼子に会えただけでも良かったと思った。礼子が壇原好みの美人であったからだった。檀原が2階の展示室を見ていると後から別の見学者が来た。
その男は猫丸と名乗った。2人で話ながら展示を見ていると、壇原の目に猫丸の背後の階段を上がるズボンの足の部分が見えた。それから少しして3回の展示室に上がった壇原と猫丸はそこに倒れていた礼子を見た。礼子は鈍器で撲殺されていた。
だが礼子はどうやって3階に上がったのか?というのは階段は常時壇原の視野の隅にあり、誰かが上がればわかったはずだし、エレベーターは点検中で使用できず、ほかに1階から3階に上がる手段はない。
さらに壇原の見たズボンの主が5階の職員休息室にいた川嶋良二とわかり、ますます謎は深まるばかり…

生首幽霊
路地の奥にある細長い平屋建てのアパートに集金に行き、そのうちの1軒で酔った女に灰皿を投げられて怪我をしたNHK外交員。
腹いせに深夜へびのおもちゃを持って仕返しに行く。その女の部屋に行くと鍵が掛かっておらず、ドアを開けたところ女の生首がこちらを睨んでいた。そして不気味な声で恨み言を…

日曜の夜は出たくない
毎週日曜は私と彼のデートの日。平日はお互い仕事があり、土曜日も休日出勤が多くて会えるのは日曜だけの私と彼。デートが終わると彼は私を部屋まで送ってくれて、その後電車で帰っていく。徒歩と電車で彼が家に帰るのは45分後。別れてから45分後に彼は私に電話をくれる。いつしか45分後の電話として2人の習慣になった。
ある日曜日のこと、私が家にかえって暫くしたころ近所で通り魔事件が起きた。その翌週も、同じ頃に通り魔事件があり被害者は死亡した。まさか通り魔は私の彼では…そういえば彼には不審なことが多い…


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