過ぎ行く風はみどり色

一代で財をなし、先ごろ隠退した不動産業者方城兵馬。他人を信ぜず、他人と交わらずをモットーに、ひたすら事業の拡大に励み家庭を顧みずに働いてきたが、引退後は邪険に扱った亡き妻への謝罪に残りの人生を捧げはじめた。
広い邸内の元納屋を改造して離れとし、本邸とは歌舞伎の花道のような橋で結び、一日中離れで亡き妻を偲んで生活していた。
亡き妻を思う気持ちは日一日と強くなり、仏像類やガラクタをしこたま買い込んで部屋中に並べ、食事は自分の分と妻の分の2人分を用意させて、離れの一室でぶつぶつ言いながら食べた。
さらに最近は長男の直嗣が連れてきた霊媒師穴山慈雲斎に入れあげていた。慈雲斎は亡き妻の霊を呼び寄せて、兵馬の信頼を得たらしい。
直嗣を除く方城家の人間は、慈雲斎をインチキ霊媒師と決め付けて兵馬に諫言するが、頑固でワンマンな兵馬は聞く耳を持たない。
そんなときに正径大学の助手神代知也と大内山渉の2人が、インチキ霊媒の手口を暴き、兵馬を正気に帰らせるとして方城家に出入りし始めた。
神代、大内山の2人は超常現象の研究者で、全国でインチキ霊媒と対決しており、方城家の人達も慈雲斎のインチキを暴くことを期待していた。

そんなある日のこと、直嗣や慈雲斎と離れで会い、その後は神代、大内山と短時間会見した兵馬が殺された。神代、大内山と会った直後まで生きていることは確認されたが、1時間ほどして夕食を持っていったところ、頭を強打されて死んでいるのが見つかった。
その間、夕食の直前まで離れと本邸を結ぶ橋は誰かの監視下にあって、誰も渡ったものはいなかった。また、離れの周囲は撒かれた水と突然降り出した雨で地面は濡れていたが、誰の足跡もなかった。兵馬のいた離れは密室状態であったのだ。
慈雲斎は兵馬の死は悪霊の仕業といい、対立する神代、大内山をはじめ方城家の人間に悪霊調伏の為に降霊会を催すことを提案するが、その降霊会で今度は衆人のなか慈雲斎が首筋にナイフを刺しこまれて絶命してしまう。
方城家に起きた連続殺人に、兵馬の孫成一は先輩の猫丸に相談するが、その不可解な事件の内容に猫丸は目を輝かせた…
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