「神田川」見立て殺人

大川探偵事務所に持ち込まれる難事件を、颯爽と現れた警視庁の間暮(マグレ)警部とその部下の谷田貝美琴が、懐かしいヒット曲を唄いながら解決してしまう連作。

第一話 「神田川」見立て殺人…レストランウェイトレス永里杏奈が、神田川沿いに建てられた3階建てのアパートの自室で死体となって発見された。杏奈は腹部をめった刺しにされて内臓が露出し、その上に数匹の蛾がうごめいていた。
そして奇妙なことに部屋には大量の竹が敷きつめられていた。死体の発見者は、同じレストランに勤める同僚のウェイトレスで、レストランの関係者によると杏奈は殺された前日に、常連客とスパゲティを巡って激しい口論になったという。
杏奈が常連客に嫌がらせで蛾の入ったスパゲティを出したのだ。動機の面からは、その常連客が有力な容疑者だが、その客は事件当時韓国にいたというアリバイが成立した。

第二話 「手紙」見立て殺人…大川探偵事務所に18歳の女の子川口理留から依頼が来た。画家の坂上隆一を殺した犯人は、妻の由紀だというのだ。話を聞いてみると隆一と理留は画家とモデルの関係だったが、いつしか不倫の関係になった。そのことを知った由紀が隆一を殺したというのだ。だが妻の由紀には事件当時横浜にいたというアリバイがあった。
マグレ警部は理留が隆一に出したラブレターが見つからず、隆一が飼っていたインコが逃がされていたことから「手紙」の見立て殺人だというのだが…

第三話 「別れても好きな人」見立て殺人…奈良本好夫殺害の重要容疑者は2人。妻の奈良本明日香と奈良本の部下の伊藤美紀。美紀は奈良本が明日香と結婚する前に付き合っていて、結婚後はきっぱりと別れたが、最近2人は再び会っていたようだ。警察は強盗殺人の線で捜査を進めたが、美紀の方は明日香を、明日香の方は美紀を犯人と疑っていた。
美紀は事件当日、好夫に呼び出されて会いに行ったが、好夫は応答せず玄関も施錠されていて入れずに引き返したという。したがってアリバイはないに等しいが、メールで呼びだされたのは記録から事実と証明された。
一方の明日香は渋谷、原宿、赤坂とひとりでバーをはしごしていたという。証人はあるが、ただ体調が悪く、酒は口にしていなかったという不自然さがあった。

第四話 「四つのお願い」見立て殺人…資産家の堤正隆が葛飾区でひき逃げさ死亡した。ひき逃げをした車は乗り捨てられていたが、その車は正隆本人のもので、誰かに盗まれたものと思われた。
正隆の長男則一は、後妻の美奈子の犯行だと主張するが、美奈子は渋谷区の自宅で病気で寝ていたというアリバイを主張した。そのアリバイを証言するのは、家政婦の伸子だった。
伸子と美奈子のあいだは険悪な仲で、伸子が美奈子に有利な証言をするとはとても思えない。その伸子が美奈子が渋谷区の自宅にいたと証言したのだった。

第五話 「空に太陽があるかぎり」見立て殺人…足立区を流れる荒川で一木野愛という若い女性の死体が見つかった。死因は絞殺で、死後川に投げ込まれたらしい。愛の父親は大川探偵事務所を訪ね、殺害犯人は愛の恋人滝本壮矢に間違いないと主張した。
愛の腕時計は12時を指しており、おそらく川に投げ込まれた衝撃で止まったと考えられた。その日の朝10時過ぎ、愛はレンタルビデオ店で3本のビデオを借り、そのビデオが死体とともに発見された。
したがって愛が川に投げ込まれたのは昼の12時ごろ、だがその時間の滝本にはアリバイがあった。テニススクールでテニスをしていたのだった。

第六話 「勝手にしやがれ」見立て殺人…25歳になるフリーター沢野井研が自宅マンションで自殺を遂げた。壁に向かってうずくまるようにして、喉をナイフで掻き切ったのだ。部屋には鍵がかかり、鍵は室内から見つかった。だが恋人の浜田由美は、自殺の動機がないとして納得せず、大川探偵事務所に調査を依頼してきた。
由美によると研のアドレス帳に内藤ちづるという名があり、その名前だけに心当たりがないことから、由美はちづるが犯人だと決めつけた。
2人は何でも打ち明け合った仲で、研のアドレス帳の中で由美が知らない名はちづるだけだというのだ。根拠としては弱いが、マグレ警部は事件は「勝手にしやがれ」の見立て殺人だと言いだした。

第七話 「ざんげの値打ちもない」見立て殺人…ボランティア組織スプリング・ウィンドを主宰する神父トーマス加賀美殺害の容疑で逮捕されたのは、北いつきという19歳の少女であった。
スプリング・ウィンドは自主的に地域の清掃をしたり、ホームレスの社会復帰の手助けをしたりとその活動は多岐に渡っていたが、トーマス神父はそこのリーダー的な存在であり、いつきもメンバーだった。
神父はスプリング・ウィンドの事務所で、ナイフを腹に刺されて殺されていた。その側には凶器のナイフを手にした北いつきが立っていて、ちょうどそこに原田という、いつきの恋人が来合わせて大騒ぎになったのだった。
いつきは神父のナイフを引き抜いただけだと弁解したが、警察はいつきを殺人容疑で逮捕した。原田は恋人を救うために大川探偵事務所に駆け込んできた。

第八話 「UFO」見立て殺人…東京から福岡に向かう飛行機の中で騒ぎが持ち上がった。毛布をかけて座っていた男がひとり消えてしまったのだ。男は夫婦と幼児の3人で飛行機に搭乗し、途中で眠くなったので妻が毛布をかけた。妻も育児の疲れか、すぐに寝てしまったが、しばらくして10歳くらいの男の子が男の毛布をイタズラで剥ぎとった。
すると驚いたことに毛布の下は服だけで、男はものの見事に消えていた。他の席に移ったわけでもなく、トイレでもなく、乗務員に頼んでコクピットまで調べてもらったが見つからなかった。飛行機に乗り合わせたマグレ警部はUFOによる見立て殺人だと言いだしたが…

第九話 「さよならをするために」見立て殺人…俳優杉田守が帰宅すると、妻の日野香奈子そ姿がなかった。それから4日、香奈子は姿を消したままだった。守と香奈子の中は冷え切っていて離婚調停中であった。
警察は自分の意思で家出したのではないかと取り合ってくれなかったが、守は事件であった場合は真っ先に自分が疑われることを恐れ、香奈子の行方を捜してくれるように大川探偵事務所に依頼してきた。
さっそく調査を開始したが、マグレ警部が現れ、香奈子はすでに殺されている、事件は「さよならをするために」の見立て殺人だと言いだした。
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