みなとみらいで捕まえて

警視庁から神奈川県警に出向した半任優里(はんにんゆうり)警部と、神奈川県警巡査南登野洋子(みなとのようこ)巡査が、横浜で遭遇する数々の難事件、そしてその裏で謎を解く117歳の名探偵にして論語の研究家明丹廷(めいたんてい)が活躍する連作。

第一話 利によりて行えば怨み多し…山手の高級住宅地の中でも、ひときわ高級な大邸宅で殺されたのは、この家の主人で会社社長の高橋俊二。被害者高橋は寝室の中で死んでいたが、死因は墜落死で、庭の花壇の煉瓦に被害者の血の跡と髪の毛が付着していた。さらに被害者は「犯人はタカハシ」というダイイングメッセージを残していた。だが、当日被害者宅には高橋姓が3人、鷹橋姓が1人もいたのだった…

第二話 三十にして立つ…死刑囚葉向井三千夫が刑務所から脱獄し、死んだ。葉向井は10年前に3人の女性を次々に殺し、死刑判決を受けたが、その逮捕のきっかけを作ったのが作田雅也という男だった。作田は発明家で、家には侵入者用の落とし穴があった。その落とし穴はアクション映画にあこがれた作田がダイニングにキッチンに作ったもので、ボタンを押すと穴の蓋が開くものだった。
葉向井は脱獄したあと、恨みがある作田邸に忍び込んで落とし穴に落ちて死んだのだ。葉向井の手にはワープロ打ちの遺書が握られていた。自殺という見方が圧倒的だったが、葉向井は死の間際に食べていたアイスクリームでMの字を落とし穴の床に書いていた。

第三話 人を知らざることを患う…俳句が好きな72歳の老婆与謝野サヨが自宅2階で殺された。死亡推定時刻は夜中の2時。そのとき1階には、ときどき訪ねて来て泊まっていく友人の老婆がおり、被害者のには寝付かれずに起きていた。この1階の老婆に気づかれずに2階に上がることはまず不可能だったが、1階の老婆は2階に人が上がる気配すらなかったと証言。
2階の窓は開いていたが、周囲は高い塀と土で、塀を乗り越えようとすれば泥がつくが、そんな痕跡はなかった。被害者のサヨはダイイングメッセージを大学ノートに残していたが、これがやたらに長く、肝心の犯人の名前のところは三とだけしか書かれていなかった。三を書いた時点で絶命したのだった…

第四話 温故知新…マンションの8階から飛び降りた会社員は、飛び降りながら変な格好をしていた。それがちょうどYMCを順番に手ぶりで示したようだとは、その瞬間を目撃した被害者の恋人の話。さらに被害者は芝生に叩きつけられたときに、両手を頭の上で合わせており、これでYMCAとなった。これはダイイングメッセージなのか。だとすれば被害者は誰かに突き落とされたことになるが、被害者の部屋のドアは内側から鍵をかけられた密室だった。

第五話 夕べに死すとも…人工海浜で発見された死体は、芦戸百合という女のものだった。死体の周囲には足跡が3つ、ひとつは百合自身のもの、あとの2つはやたらに大きな靴でつけられたもので、往復していた。さらに百合は砂浜にダイイングメッセージと思われる青の字を書き残していた。犯人は青に関係ある、大きな足の持ち主ということになるが…

第六話 何ぞこの道に由ることなきや…株の売買で財を成した加勢田金造が、独り暮らしのマンションの部屋で死んでいた。死因は頭部を強打したしたことで、マンション内にトレーニング用に設置した階段から落ちたようだ。
それだけでは事故死だが、その後に金造は同じ室内にあったマッサージ機まで歩き、それに座ってマッサージ機能を作動させて死んだ。南登野洋子巡査は、マッサージ機に座って死んだこと自体がダイイングメッセージで、金造は殺されたに違いないと主張するのだが…

第七話 巧言令色鮮し仁…殺人事件の現場は雪の密室だった。雪が降り始めたのは午前4時、被害者の死亡推定時刻は午前5時、現場は斎高隆高邸のなかにある離れであった。
斎高邸では前夜からクリスマスパーティがあり、パーティの終了後に主人の斎高が離れに入って、趣味の模型飛行機を作り始め、災厄にあったのだ。離れの周囲一面に広がる処女雪の様子は、たまたま泊まり客によってビデオ撮影されていた。撮影されたのは午前7時、雪には足跡一つなかった。
この状況により自殺説が有力だったが、斎高はダイイングメッセージを残していた。ダイングメッセージには客の一人でもある貴志理徹が犯人であると、明確に記されていた…

第八話 厩焚けたり…横浜港から氷川丸が消えた。文字通り消えたのだ。一方、明丹廷老人のいる中華街の店が火事になり、明丹廷の死体が見つかった。それら一連の状況をみて半任警部は、自身がなぜ警視庁から神奈川県警に派遣されたのかを南登野巡査に打ち明けることにした…

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