隕石誘拐

童話作家を志して一流保険会社を辞めた中瀬研二だったが、その作品は賞の予選に何回か残った事がある程度で、一向に芽がでなかった。
そのことで妻の稔美とは喧嘩が多くなり、今朝も一人息子の虹野の教育方針を巡って口論。虹野はまだ4歳だったが、ほかの子よりも発育も発達も遅かった。
研二は多少他の子より劣っても、伸び伸びと育てるのが一番といい、一方稔美の方は教育熱心で、早く塾に入れたがった。もっとも今の中瀬家には子供を塾に通わせるほど財政的な余裕はなかった。
そんな虹野が引き算が出来ないといって朝から稔美がイライラしていたのだ。しかも虹野は風邪でも引いたのか、熱があった。さすがに稔美も幼稚園は休ませるが、せっかくの休みだから家でしっかりと引き算を勉強させるというのだ。
熱のある子供に勉強なんて、という研二と口論になったのだ。研二は結局、不快なまま朝飯も食べずに家を出た。研二は結婚式場のトイレ掃除のアルバイトをしていたのだ。
もちろんアルバイトの内容は稔美には言っていない。清掃システムの総合管理と言って誤魔化していた。給料も全額渡してはいなかった。それがまた稔美にとっては不満の一つだった。

出掛けに喧嘩をした研二は、仕事を終えてもまっすぐに家には帰りたくなかった。ちょうどアルバイト仲間の白鳥まゆみに誘われて食事をし、酒を飲み、まゆみの家に行った。
まゆみと研二は池袋にあるカルチャーセンターの童話創作教室で知り合った。今やっているアルバイトも、まゆみの紹介であった。だから2人が食事をしたり、酒を飲むのは不自然とまではいえないが、さすがに家に行くのは不自然だった。
まゆみは研二に惹かれているようだったし、研二の方も出掛けの喧嘩が緒を引いて、どうにでもなれという気持でまゆみの家に行ったのだ。
だが、いざまゆみの部屋に入る段になって研二は思いとどまった。やはり稔美の顔が脳裏に浮かんだし、いやな予感がしたのだ。まゆみを振り切って研二は自分の家に戻った。
ところが家には稔美も虹野もいなかった。研二は朝の喧嘩が原因で、稔美が虹野を連れて家を出て行ったと思ったが、実は稔美と虹野は誘拐されていたのだ。
誘拐犯が2人を拉致したのは、七色のダイヤモンドのありかを探るためだった。稔美の父親は宮沢賢治の研究家で、宮沢賢治が七色のダイヤモンドを見つけて、それをどこかに隠してといることを突き止めた。
さらに独自の研究を進めてダイヤモンドを探し出し、その場所を子供の稔美の記憶の中に巧妙にインプットしたらしい。それを知った宮沢賢治に傾倒するカルト集団に2人は誘拐されたのだった。
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