踊るジョーカー

気が弱く、何かあるとすぐに逃げようとする名探偵音野順と助手を自称し音野のしりをひっぱたくミステリ作家白瀬白夜が密室やダイイングメッセージ、足跡のない殺人など5つの難事件をおどおどと解決。
踊るジョーカー
いくつかの難事件を解決した音野順は、友人の推理作家白瀬によって名探偵に祭り上げられ、探偵事務所まで用意されてしまった。さらに最初に依頼人まで用意されているという。白瀬の友人の友人南斉貴一という男だった。
事件は南斉の屋敷で起きた。貴一の父親の周囲に半年くらい前からトランプのカードが意味もなく出現しだした。窓枠に挟まれていたり、靴やベッドの中から現れるのだ。心臓が悪かった父親はノイローゼになり、地下室に閉じこもった。
この地下室は、はるか昔に核戦争の際のシェルターとして造られたもので、地下へ続く階段入口とその階段を下りた地下室入口の扉に錠が付けられた。階段入口の鍵は普通の鍵だが、地下室の扉のものは精巧な電子錠だった。
その部屋の中で父親は、腹をナイフで刺されていた。地下室への錠は2つともかかっており、部屋の中は多くのトランプが散らばり、さらに凶器のナイフにも50枚ものトランプが突き刺さっていた。つまり被害者はトランプ越しに刺されたのだった。
事件当時屋敷にいたのは貴一のほかに婚約者の藍子、被害者に20年間仕えている執事の根津の3人だが、3人とも地下室へは同時に入って被害者を発見している。出馬を嫌がる気の弱い名探偵を引き連れた白瀬はさっそく現場に向かった。

時間泥棒
上野アサヒとカイ姉弟は美術関係の仕事をしていた両親を亡くして、家屋敷と生涯遊んで暮らせるほどの財産と多くの美術品を相続した。それでもアサヒは勤めに出ていて長崎という恋人もいたがたが、カイは引き籠って何もせずに暮らしていた。
その2人が住む屋敷で時計が次々と無くなった。最初は洗面所の壁掛け時計、続いてアサヒの部屋の置時計、さらに壁掛けの振り子時計というように消えて行ったが、どれもどこにでも売っている安物で、金銭的な価値はない。
警察に届けるほどのこともないが、盗まれている可能性もないではない。悩んだカイは長崎に付き添ってもらって名探偵音野順の事務所を訪れた。

見えないダイイング・メッセージ
名探偵音野順のところに笹川晃と名乗る男が依頼に来た。晃の父親は発明家であり事業家でもあるが、自宅で強盗に襲われて殺された。強盗は何も奪わずに逃げたが、いまだ検挙されていなかった。
その晃の依頼は、父の死で開かなくなった部屋の金庫を開けること。金庫はオーダーメードの暗証番号式であったが、暗証番号は父親しか知らないという。
金庫を製造した会社はすでに倒産して無くなっていた。開錠の専門業者はオーダーメードの為に暗証の桁数すらわからないといい、永遠に開かなくなるリスクを承知で錠を壊すしか開ける手はないという。
晃は錠を壊すのは最後の手段にし、名探偵に相談することにしたのだった。手がかりとしてあるのは、晃の父が死に際に室内を写したポラロイド写真のみ。その写真も何の変哲も無いものであった。

毒入りバレンタイン・チョコ
南大洋大学の研究室で、ゼミに参加していた女子大生の栄子が突然倒れて意識不明となった。救急車で病院に運ばれ、青酸化合物による中毒と判明したが、幸いに致死量以下の微量であったことと手当てが早く適切だったために命に別状はなく、翌日には意識も戻った。
警察の捜査によれば、研究室では担当の遠藤教授と栄子を含む4人の学生がバレンタインのチョコレートをつまみながら、コーヒーや紅茶を飲んでいた。毒物はそのチョコレートの一つに付着していたらしい。
というのはチョコレートの入っていた台紙のひとつから青酸化合物が検出されたのだ。チョコレートは自家製で、栄子と椎菜の2人の女子学生が作って持ってきたものだった。型枠に入れた同じ形のものが、台紙に一つづつ入れられていて、その個数は32個あった。
そのうち食べられたのが13個あり、すべて台紙は残っていたが、その1個だけに毒物が付着していた。まだ食べられていない19個のチョコレートにも一切異常はなかった。つまり32個のうち毒が仕込まれた1個を栄子は食べたのである。学生の一人が友人経由で音野に調査を依頼したが、警察の方もエリートの高庭警視が捜査にあたることになった。

ゆきだるまが殺しにやってくる
事件を解決した帰り道、音野順と白瀬は道を間違えてしまった。あいにく天候は雪になり、それもどんどん激しくなってくる。そんなとき目の前に豪壮な西洋館が現れた。2人は救援を求めるべく屋敷へ向かった。
屋敷の主笹宮は2人の宿泊を認めてくれたのだが、屋敷ではこの日とんでもないことが行われていた。それは笹宮の娘の美子の結婚相手を選ぶコンテストだった。しかも美子が望む理想の雪だるまを作った者が、結婚相手となるのだった。
聞けばおととしから同じ催しが行われ、過去2年間は全員が失格だった。そういうこともあって今年の挑戦者は藤原と神谷の2人、いずれもリトライであった。そして飛入りで音野も参加する羽目になってしまったのだ。ところがその晩、庭に作られた雪だるまの前に藤原が死体となって忽然と現れた。


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