秋の花

津田真理子と和泉利恵は幼稚園のころからの大の仲良しで、どこに行くのも何をすのも一緒。小学校、中学校、そして女子高も一緒だった。高校2年の時に2人は揃って文化祭の実行委員になった。
学校の年間最大の行事である文化祭の準備がたけなわとなるのは、その一週間前。実行委員は合宿と称して、泊まり込みで準備を進める。真理子と利恵ももちろん泊まり込みだ。
そして合宿初日の夜、校舎の屋上から真理子が中庭に転落して死んだ。親友の利恵はそれを見て卒倒した。学校は大騒ぎになり、文化祭は中止になった。
その日以来、利恵は変わってしまった。当然だろう、親友を失ったのだ。ひとりでふさぎ込むようなことが多くなり、3年になると学校も欠席しがちになった。私もそんな利恵の様子を耳にすると心を痛めたが、どうすることもできなかった。
真理子と利恵は私とは3つ違いだが、家も近所で小さい時から知っていた。小学校の時に同じ登校班を組んでいたし、中学も高校も2人は私の後輩になる。
2人が今の高校に進学を希望したときも、学校の様子を聞きに揃ってクッキーを持って遊びに来た。3年違いだから入れ違いにはなったが、2人とも妹のように思えることもあった。

そんなある日、私の家の郵便受けに教科書のコピーが入っていた。高校の政治経済の教科書の1ページをコピーしたもののようで、アンダーラインや書込がしてあった。
そのコピーを見た瞬間、私はその教科書が真理子のものであるような気がした。しかし確かめようがない。数日後、台風が近づいて雨が降りしきるなか、家の窓から外を見ると、公園のベンチに制服姿の女子高生が雨に打たれて座っていた。利恵であった。
私は慌てて公園に向い、ずぶぬれになった利恵を連れ帰った。やはり利恵は真理子のことで悩んでいた。その利恵が落ち着いたところで、教科書のコピーの話をする。やはりそれは真理子の政治経済の教科書のようだった。だが、その教科書は真理子の母が棺に入れたはずだという。
私は利恵のことが心配になって、久しぶりに学校を訪ね担任の先生から利恵の様子を聞いた。やはりほとんど学校に来ていなかった。真理子の死を苦にしているのだ。その夜、屋上に上ったのは真理子だけだった。
遺書はなく直前まで自殺するような様子はなかった。屋上にはほかに誰もいかなったことは確認されている。なぜ真理子は屋上などに行ったのか。それもいつも一緒だったはずの利恵をおいてひとりきりで…
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