空飛ぶ馬

「円紫師匠と私」シリーズは北村薫の人気作であり、不動の地位を得た作品。女子大生の私が日常出会った出来事に、落語家の円紫師匠がオチならぬ見事な解決を…
織部の霊
私と円紫さんが初めて会ったのは、大学の雑誌の座談会の場。私は加茂教授とともに円紫さんにインタビューしたのだ。座談会が終わって、教授と円紫と私は居酒屋で雑談。
その席で加茂教授は、子供の頃に古田織部の姿が夢に出てきて、その夢と全く同じ絵が美術品を集めていた叔父の蔵から出てきた話をした。円紫さんはこの話に合理的な説明がつけられるというのだが…

砂糖合戦
私と円紫さんが入った渋谷の紅茶専門店。私たちが入ってすぐ後に3人組の女の子が入ってきた。私が見るとはなしにその3人組を見ていると、3人は砂糖をやたらに紅茶に入れた。しかも、それをかき混ぜようともしなかった。
このことを円紫さんに囁くと、円紫さんは立ち上がってマスターと内緒話をし、私を急き立てて店を出た。そして私に3人組の一人の後をつけろという。そして恐らく店に戻ってくるはずとも付け加えた。
やがて出てきた3人組の1人を、円紫さんの指示通りつけた私。するとその子は駅のトイレで服を変え、別人のようになって再び紅茶専門店に入っていった。円紫さんの言うとおりになったのだ。

胡桃の中の鳥
蔵王に円紫の独演会を聞きにきた私と正ちゃん。地元には2人の友人の江美ちゃんがいて、3人で独演会を聞き、温泉旅館に泊まり、翌日江美ちゃんの車で蔵王に上る。
頂上の駐車場で江美ちゃんが車の窓を開け、キーもつけたままで降りてしまい、気づいて戻ったところ、シートカバーが全て持ち去られていた。
円紫さんはその話を聞いて、「皆さんの知っている3歳くらいの子供はいないか」と尋ねてきた。私たちは昨日の夜、温泉旅館で3歳くらいのゆきちゃんと知りあったのだが…

赤頭巾
私が歯医者で話しかけられたのは、少し身勝手で回りのこともあまり考えない奥さん。その奥さんの知合いに公園の隣りに住む森長夕美子という女性がいた。
夕美子は私に知合いでもあった。その夕美子が、毎日曜の9時に公園に置かれたきりんのモニュメントのところに、赤いものを身につけた子供を見るという。
時間はわずか30秒くらいだが、じっと佇んでいるというのだ。歯医者で知合った奥さんも、夕美子とともにその子を見たという。いつも何らかの赤いものを身に付けているので、赤頭巾ちゃんと呼んでいたが、その時は赤いフードある服で、フードをすっぽり被り赤頭巾のそのままだった。
その話を聞いた私はさっそく円紫さんに相談に…

空飛ぶ馬
私の家の近所の酒屋の若旦那。仕事が好きで愛想がよく、近所の評判もいい。その若旦那が去年から幼稚園のクリスマス会でサンタの役をやり、今年は子供たちにプレゼントを配ったほか、幼稚園に木馬を寄付した。
酒屋の店先に置いてあった木馬で、100円入れると前後に動く例のやつであった。機械が壊れたので、幼稚園に寄付してくれたのだった。
クリスマス会の時に幼稚園に持ち込まれたその木馬。ところが、その夜何者かに持ち去られていた。そして翌朝に再び帰されていたのだ。夜中に園の前を通った人は絶対に木馬はなかったと言い張ったが…


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