マリオネット園

あかずの扉研究会の部室に、研究会メンバーの由井広美に伴われて入ってきたのは沢入美由紀という女子高生。あかずの扉研究会が関係した、過去の事件で犠牲となった野々原涼子の同級生だった。
その涼子の名を騙った手紙と三行詩のような文章が美由紀のもとに配達され、そのことで相談に来たのだという。三行詩には「一字違いで大違い、丸に張りつく三角で、死体は家に帰り着く」とあり、さらにどこかの駅のコインロッカーのキーが同封されていた。
このとき部室には自称名探偵鳴海雄一郎、どんな錠前でも開けてしまう大前田丈、由井広美それに研究会書記の二本松翔のメンバー4人と竜王出版社の水上和美がいた。
あかずの扉研究会が遭遇した「ドッペルゲンガー宮」事件を翔が推理小説にして、それを竜王出版に送ったところ、竜王出版では出版することになり、その担当者が水上和美であった。
「ドッペルゲンガー宮」出版の話はトントン拍子に進み、水上はこの日著者進呈用の本10冊を持って、あかずの扉研究会にやって来ていたのだった。
翔は出版が嬉しくてたまらず、この日メンバーを集めたのも進呈本を持って水上がやってくるのに合せてのことで、もちろん翔が強制的に呼び出したのだった。

ところが研究会会長の後動悟と霊能力をもつ森咲枝には連絡が取れず、この場にもいなかった。そのころ後動と森は川崎にあるマリオネットランドに建つ首吊塔と呼ばれる斜塔にいた。
マリオネットランドは川崎の臨海工業地帯にあったテーマパークだったが、交通の便が悪くてわずか3年で閉園となった。敷地は大半が私有地で、閉園後に設備はほとんど撤去されたが、斜塔だけが残っていた。
斜塔はピサの斜塔を模して建てられたものだが、内部は水平で5階建て。1〜3階は遠々見仙水という大実業家の住居で、4階がレストラン、5階が展望スペースになっていた。
斜塔が取り壊されずに残っているのもここに理由があった。敷地のほとんどは仙水が市に寄付をした土地だったが、仙水はその中に斜塔を建て一部を住居とし、斜塔部分だけは私有地にしていたのだ。
その関係で斜塔には直行のエレベータが5階まであり、4階には5階から階段かスロープを降りるしか行く方法はなかった。1〜3階は個人住宅のために3階と4階の間は行き来が出来ないようになっていたのだった。
ところが仙水は閉園とともに行方がわからなくなり、現在では斜塔だけが無気味な姿を晒していた。その塔では閉園前から、何人もの人間が首を吊って死んでいて、そのために首吊塔というありがたくない名前まで付けられ、それが一層不気味さに拍車をかけていた。
その首吊塔に森咲枝が同窓会通知を装った手紙でおびき出された。咲枝は半ば疑いながらも、心を動かすようなことがことが書かれていたために斜塔に行き、それを知った後動は危険を察知して追いかけたのだった。
後動と咲枝は首吊塔の中に軟禁され、さらに死体が出たり消えたりしたあげくに、塔内のエレベーターから胴体だけの死体が転がり出たりと次々に不思議なことが起こる。

一方、この間鳴海や翔などほかのメンバーは、水上や美由紀とともに暗号のような三行詩にしたがってあちこち駆け巡る。
最初の三行詩が赤羽駅を指すことがわかり、メンバーが駆けつけると、コインロッカーのキーがピタリとあった。すると中からはマリオネット人形が一つと5通の封筒が出てきた。
封筒にはそれぞれ三行詩が書かれた紙とコインロッカーの鍵が入っていた。三行詩は比較的難しくなく、それを解読した鳴海の指示でメンバーはあちこちに散った。
鴻巣駅、三郷駅、白岡駅、府中本町駅、関内駅それぞれに行き着いたメンバーは、やはりコインロッカーの中にマリオネット人形を発見した…

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