皇帝の新しい服

愛媛県と広島県の境界付近に浮かぶ錠前島にある仲津賀神社では、毎年春に例祭が行われる。この神社は水軍所縁の神社で、例祭に時には無人島の錠前島も多くの見物客で賑わうのだが、今年は大祭とよばれる特別な年にあたった。
大祭の際には地元今治の名門美蔵家の婿取りの儀式が行われるのだ。美蔵家は水軍所縁の家であったが、現当主の美蔵武治が開運をはじめとする大会社を築き上げたのだった。
武治も50年前、仲津賀神社の大祭で美蔵邦子に選ばれて美蔵家の婿となり、商才を発揮して小さな海運会社だった美蔵家を、日本有数の大会社にしたのだった。武治と邦子の娘を知子といい、やはり大祭で謙一という男を婿取りし、恵理という娘が生まれたが、健一も知子も既に故人になっていて、今年は恵理の婿取りが行われるのだった。
婿取りの儀式は4人の婿の候補がいて、まずはじめに嫁の候補、今年の場合は恵理だが、と集団のお見合いが行われる。その後、婿の候補4人はすぐ隣の鍵島に渡り、鍵島の東西南北にある4つの建屋に入る。
建屋の扉には錠前が掛けられ、それぞれ鍵が渡される。22時に建屋の男たちは渡された鍵で扉の錠前を開けるのだが、開けられるのは1人だけで、それ以外の3人は偽の鍵が渡されていて扉は開かない。
本物の鍵を渡されるのは嫁に選ばれた1人だけで、その男が婿となり、錠前島に渡って晴れて夫婦となるのだった。実際は選ばれる男は事前に決まっており、残る3人はダミーだった。
さて今年、ダミーの一人に選ばれたのが桜藍女子学院高校ミステリ研究会特別顧問の石崎幸二。研究会の会員の深月仁美の紹介で、恵理が美人なのを知り大乗り気。ところが調べてみると知子の大祭のときに、候補の男3人が溺死したり、別の時には男が刺殺されたりして、呪われた大祭として有名だった。
このことを知り石アは渋り出し、さらに脅迫状まで舞い込むに及んで完全に及び腰となるが、研究会の御薗ミリアや相川ユリらに脅されたり宥められたりして、結局は仁美も加えた4人で錠前島に行くことになった。

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